第11話

部活の練習試合に出かける為、何故か私もついてきていた。



今日はマネージャーとして、お手伝いでだ。



マネージャーというにはいささか役に立たないけれど。



練習試合とはいえ、なかなか迫力があって、見入ってしまう。



みんな凄く真剣で、熱くて、格好いい。



そして、特に私の目を引いたのは、やっぱり彼。



「格好いいなぁ……」



「誰が?」



「ひぇっ!?」



突然耳元で声がして、飛び上がる。幸い声がそこまで大きく出なかったけど。ひぇって何だ、ひぇって。



奥島君は、すぐ私の見ていた方向を向く。



「あー、林田か。やっぱり、唯栞って林田の事好きなんだ」



「へっ!? えっ……あ、あの、えっ、と、その、な、なん、なんでっ……」



唐突な登場に、しどろもどろになる私。



そんな態度に出てたのか。自分では気づかないくらい、分かりやすかったんだろうか。



「そんなあっつい目で見つめてたら、誰だって分かるよ。しかも俺はいつでも唯栞を見てるしね」



そう言って、彼は少し距離を詰めて、私の指に指を絡めた。



「ねぇ、何で林田? あいつは、恋愛とか女とか自分には向かないって奴なのに。ねぇ、やっぱ俺にしよーよ、ね?」



「ちょっ、奥島君っ……」



毎回彼は距離が近い。しかも、ここは他校で。あまりよろしくない。



「奥島〜、林田が呼んでんぞ〜」



「おー。あいつ、わざとか……んじゃ、またね、唯栞」



そう言ってキスされた。誰にも見られていないか周りをキョロキョロしてしまう。



「よかった……誰にも……っ!?」



非常にマズい。同じように端の方で座る二、三人の他校部員と目が合う。



顔に熱が集まる。目を逸らして俯いていると、帰ってきた部員達が私を囲むようにして座る。



「あれ? 顔赤いけど、熱? 大丈夫?」



「えっ? マジか。大丈夫かよ」



「だ、だ、大丈夫っ! ちょっと暑いだけだからっ!」



心配する声に誤魔化すように笑う。



他校の方に目を向けられないから、まっすぐ視線を向ける。



林田君と目が合う。



他校の生徒と練習してかいた汗、あがった息。性的な意味じゃない興奮なのに、ゾクゾクしてしまう。



「あ、唯栞ちゃん今エロい顔してる」



「俺も思った。ヤりたくなるわ」



「くそー、何で今他校なんだ……俺ヤりてー」



色々言われてたけど、私は自分の顔を隠す事しか出来ない。その間も他校の部員の視線は感じていた。



「でもさ、ちょっとだけ……」



「いいね〜、もうちょいで休憩だし」



「唯栞ちゃん、ちょっとだけ、駄目?」



そう言って足を撫でられる。



林田君を見ていて、熱くなりかけていた体に、スイッチが入る。



でも、こんな場所で触られて、普通に出来る気がしない。



「他の人も、ぁ、いる、からっ……んっ……」



「ちょっとくらいバレないって」



「そうそう、ちょっと我慢、ね?」



「ゃ、む、りっ……だめっ……」



俯いてスカートを握りしめ、出そうになる声を唇を噛んでグッと堪える。



体の大きな彼等が私を囲むようにしているから、見える心配はないけれど、ずっとこの場所だけ部員が集まっているのは、さすがに変だし、バレないとは限らない。



「やべぇ、マジでヤリたくなってきたわ」



「俺も、唯栞ちゃんのやらしい顔見てたら、我慢できねぇ」



「休憩なったら、行くか」



熱を帯びた彼等の目。それだけで、慣らされた体が熱くなる。



ほんと、淫乱。



前からセックスは嫌いじゃなかった。気持ちいい事が好きなのは元々。それに拍車がかかった。



淫乱じゃない。ド淫乱だ。どうしようもないな、私は。



少し触られただけで、体の準備が整って、受け入れようとする。



早く、楽になりたい。



気持ちいい感覚を求めるやらしい体。お腹の奥がジンジンして、濡れていく。



自然と林田君に視線を向ける。



見られてる。



顔が少し不機嫌に見えるのは、気のせいなのか。



熱く刺さる視線が、体中を愛撫するかのように纏わりつく。



触られていないのに、頭から痺れてくる。



「主将の顔、怖くね?」



「つか、怒ってる?」



部員達の声が段々耳に入らなくなってくる。



彼しか、見えなくなる。



どんどん好きになって、諦められなくなる。



そんな私の耳に、休憩の合図が聞こえた。

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