第二章

第8話

立ち入り禁止のはずの屋上。



「ゃ、あぁっ、んっ……そんな、にっ、した、らっ、声っ、でちゃ……」



「いいよっ、声、聞かせてよっ……んっ……」



奥島君に連れられて、屋上に来てすぐに体を開かれる。



爽やかな笑顔で、いやらしく触る手の感触に、雰囲気にのまれる。



「あっ、そこ、ダメっ、んぁあっ……」



「嘘つき……ここ、好きなくせにっ……はぁ」



抱き合うように向かい合って、下から突き上げられる。彼はこの体位が好きなようで、必ずこうやって抱かれる。



「ぁっ、んっ、ねぇっ、名前、呼んでよ……」



「おくっ……」



「じゃなく、てっ……下の名前でっ、呼んでよ」



名前なんて呼ばせて、彼は何がしたいのか。



「……けん、とっ……」



「くっ、やばっ……破壊力抜群じゃんっ……イキそうになったっ……あっぶねぇ……」



名前を呼ぶだけで喜んでもらえるのは、普通に嬉しい。



でも、気持ちに答える手段が、体を差し出す事だけというのは、微妙だ。



「唯栞から、キスしてよ……」



顔を近づけて鼻を擦り付ける。彼はよくこれをする。キスをねだる時にする行為。



「んっ……はぁ、ぅんっ……」



「唯栞の唇っ……甘いっ……舌も、最高においしぃよ……」



あなたの言葉の方が甘い。甘すぎる。



入っている場所が、更に濡れて、彼のモノを欲しがって締め付ける。



「もう、ほんと、君はやらしいよねっ……」



「ああっ! あっ、んっ、やぁっ、激しっ……」



肉がぶつかる音が大きくなって、水音がやらしく響く。



体を仰け反らせ、喉をひくつかせながら何度も細かく達する。



「ダメっ、だめぇ……っい、まっ、イ、イってるっ、からぁっ……あぁあっ、い、ああっ」



「イってるっ、最中にこのっ、はぁ……いいとこ突かれんのっ、んっ、ぁっ……気持ちいいでしょ? いっぱい突いてっ、あげ、るっ、からっ、んっ、あぁっ……いっぱいっ、はっ、イってっ……」



突き上げられるスピードと強さが上がって、打ち付けられる力に、ただ揺さぶられ、声を上げ続ける。



外なのに、学校なのに、声を控える事もせずに高く喘ぐ。



もう、何も考えられなくなる。



「イクよっ、奥に、出すからっ、しっかり受け止めてっ、ねっ……ふっ、くっ……」



「あぁっ、んっ、はっ、ふぅっ、ぁああぁっ」



キツく抱きしめられて、達してしまう時、首にチリリと痛みが走る。



中に出される感覚にも慣れてしまった。



こんな歳でこんな事に慣れるとか、困ったものだ。



「はぁ〜……もう唯栞マジで最高……気持ちよすぎ、可愛すぎ……好きすぎる……」



抱きしめられて、彼は胸に顔を埋めて呟く。



「あ、あり、がとう?」



「ぷっ、何それ……どこまで可愛いんだろうねこの子は。何で俺のじゃないんだよ〜」



拗ねたような顔でむくれている彼が、上目遣いで私を見上げる。



彼の方が絶対可愛い。モテるだろうに。



私になんか構わず、普通に恋をして、普通に幸せになって欲しいな。



私は答えてあげられないから。



彼と別れた後、私は屋上でまた横になる。



横を向いて体を丸めて目を閉じる。



疲れた。眠い。ダルい。



微睡みながら、チャイムの音を聞いていた。







放課後。柔道部のお手伝い。



「疲れた〜。唯栞ちゃ〜ん、癒して〜」



「俺も〜。今日は一段と地獄だったわ〜」



タオルを手渡しながら、集まる部員達と言葉を交わすのにも、最近は違和感なくできるようになった。



しかし、私は癒し系ではないので、癒せないような気がする。



「私じゃ癒しにならないでしょ?」



「いやいやっ! こんなむっさいだけの空間にいてくれるだけで、全然違うよっ!」



「そうそう、女の子一人いるのといないのとじゃ、やる気も違うっ!」



力説されて苦笑する。



平和な時間。この時間は嫌いじゃない。



こんな普通に話をしていても、やる事はやってるっていうんだから、変な話だ。



異常空間だ。



そして、またあの時間がやってくる。



「ああっ、もっ、出るっ……」



今日は何人に注がれただろう。



何人に囲まれても、最近では何も思わなくなって、麻痺してきているのが自分でも分かる。



段々と一人ずつする部員も増えてきて、負担は大きくなったのか、少なくなったのかもよく分からない。



体の負担を考えて、林田君の配慮で毎日するわけでも、全員が全員するわけじゃないけれど、少ない日は、やっぱりありがたい。



シャワーを浴び終えて部室に戻ると、戸締りの為に残ってくれている林田君と目が合う。



「終わったか?」



「あ、はい」



目の前にすると、やっぱり心臓がうるさく動く。



「水、飲むか?」



「へ? あ、ありがとう、ございます」



ペットボトルを受け取って、冷たい水を喉に流し込む。



その間にも、林田君の視線が熱く、絡みつく。



「あ、あの……」



「あぁ、そうだ。これ、もらったんだが、お前食べるか?」



差し出されたのは、小さな袋に入ったチョコレートだった。



形が色々入っていて、とても可愛い。



「わぁ、可愛い。でも、いいんですか?」



「あ、あぁ、俺はどうも甘いのが苦手でな」



少し頬が赤く感じたけれど、気のせいだったのか、またいつもの顔に戻る。



いつの間にか、近づいていた事にドキリとする。



目が、離せない。



「食わせて、やろうか?」



欲望を剥き出しにしたような、ギラギラした目を向けてそう言った。



「……食べさせて……」



答えるように、甘えるように言う。



チョコレートを一粒掴み、彼の指が私の口に触れた。その指ごと、舐めしゃぶる。



駄目だ。彼の前では恥も捨てて、淫らな自分ばかりを晒してしまう。



「ふっ、俺の指、そんなに美味いか?」



「んっ、はぁっ……おい、しっ……ぅむ……」



もう片方の手で一粒掴み、私の口から指を引き抜いた。



ベンチへ座り、熱い視線で私を見つめる。



「食いたいなら、食いに来い」



自らの口へチョコレートを持って行き、咥えて私を惑わせる。



こんな甘い誘惑に、私が抗えるわけがない。

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