第6話
首につけている首輪が、締まってないのに苦しい。
校舎裏。木陰に腰掛けてただ空を見る。
最近は、毎日放課後になると処理に付き合う為、体がダルい。
体力は前よりそこそこついてきてはいるけれど、それでもやっぱり疲れる。
「体育会系恐るべし……だわ」
なのに、林田君を見ると、どんなに疲れていても、欲情するのが止められなくて。
処理中はほとんど外にいる林田君が、最近たまに傍観者として部室にいる時なんて、狂いそうになる。
あの熱くて雄の香りを宿した目で、私を見る。ただ、見つめてる。
それだけで凄く恥ずかしいのに、気持ちよくて。
「視線だけでイクとか……変態かっての」
淫乱なんじゃないかって思う。いや、多分淫乱なんだろうな。
首輪がなければもっと素直に。でも、首輪がなければ、彼とこうはならなかった。
「ほんと……矛盾ばっか……ムカつく……」
自傷気味に笑う。
授業に出るのも億劫で、目を閉じる。
体を丸めて、横たわる。
「あー……駄目だ……眠すぎ……」
意識がゆっくり溶けていく。
授業の始まるチャイムを聴きながら、意識を手放した。
ザワザワとした音が遠くに聞こえ、静かになる。
また授業が再開されたのが分かった。
目が開かない。まだ、眠い。
あれ、ちょっと待って。体に何かかけられているような感触。
上着? そんなの掛けた記憶ない。自分のは着てるし。
それに、何かペラペラと紙を捲るような音がする。
「んっ……」
身を捩って、眠い目を少しだけ開けてそちらを見る。
「ん? 起きたか? こんな場所で寝ていたら、風邪を引くぞ」
太くて低くて重たい声。なのに、どこか優しくて、心地良い。
「なっ、なななっ、な、んでっ……」
「特に意味はないが、風邪を引くといけない」
そんなに小さいわけじゃない私の体を、すっぽり包む、大きな上着。
彼の、匂いがする。
ヤバい。これは、マズイぞ私。
「まだ、眠そうだな」
「っ……」
頬から耳へ大きな手が滑り、髪を梳く。
そんな触り方、ズルい。
優しく見つめないで。微笑まないで。
「ほら、まだ眠いなら寝てろ。体、休めないと、もたないぞ」
「わっ!」
頭を優しく押さえられ、寝かされる。
膝枕。これは本格的にヤバい。
彼の香りが、私を包む。甘い。甘すぎる。
心臓が破裂しそう。壊れる。
でも、離れたくない。
ふと思う。
彼は、彼女とか好きな人とかに、今以上に優しく触って、甘く囁くんだろう。
嫌だな。見たく、ないな。
知りたく、ないな。
駄目だ。泣きそう。
彼の上着を抱きしめて、また目を閉じた。
このまま、時間が止まればいい。
ウトウトしながら、頭の上で捲られる紙の音を聞く。
「お前の髪、サラサラだな……」
髪に指が絡められ、撫でられる。
気持ちいい。愛でられている。まるでペットみたいだな。
ペットでも何でもいい。
そばにいられて、触ってもらえるなら。何だって、いいから。
だから、今はこのまま。
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