第11話
専属の奴隷となってからは、どこにいようと、何をしていようと、主が呼べば駆けつけ、誰がいようと、どこであろうと抱かれる。
うちの主はそういう人だ。
我が道をゆく。他人の目なんてどうだっていい。自分は絶対的存在みたいな。
「一ついいですか?」
何度目かの夜。私はいつものように、鳳月奏夢に抱きしめられながら眠っている時、ふと気になった事を質問する。
「鳳月君は……怖いものとか、ありますか?」
「怖いもん? ないな。何だその質問。お前は?」
質問が一瞬にして帰ってきて、頭を悩ませる。
世の中は怖いものだらけで、怖くないものを探す方が難しい。
私は、何が怖い?
分からない。私は何が怖いのかな。
「……何でしょうね……よく、分からないです」
「んだそりゃ。自分からした質問だろ。わけわかんねぇ……」
私の髪を指で遊ばせながら、また静寂が訪れる。
この静けさは嫌いじゃない。ほんとに自分が奴隷なのか不思議になる。この人は、私で一体何がしたいのか。
不思議な人だ。まるで恋人みたいに扱う。
優しくして優しくして、それから捨てるのかな。そうやって苦しめるのかな。それこそが最大の苦痛なのかな。
捨てられるのは、辛い。それを私は知っているから。だから、希望なんて持っちゃ駄目なんだ。心を冷まして、心を閉ざして。捨てられても、大丈夫なように。
誰も信用しちゃ、期待しちゃ駄目なんだ。
静かな寝息を立てた彼をチラリと見て、ソロリとベッドから抜け出した。
慣れた足取りで、バスルームへ向かう。
鏡の前に立つ。
「……相変わらず……凄いな……」
彼は、何故こんなに私の体に痕を残すのか。自分の体中に散らばった紅い痕が、物凄い数で毎回驚いてしまう。
軽くシャワーを浴び、出ようと扉に手をかけると、勝手に扉が開く。
「風呂入んなら、誘えよな。水臭ぇ奴隷だな」
意地の悪い笑い方をして、また私を押し戻す。
髪を洗って、体を洗うのを手伝う。
何度見ても見惚れてしまうほど、綺麗に鍛えられた体。
水に濡れた髪を搔き上げる姿は、凄く色っぽくて、女の私ですら嫉妬するくらいだ。
「やべぇ……お前の体中の痕見てたらさ、何か……勃ったわ」
何度も体を重ね、もちろん口でした事もある。それでも目のやり場に困るくらいには、まだ私には、慣れは来ない。
「御奉仕して? 奴隷ちゃん」
ニヤリと笑う主に、おずおずと昂りに手を伸ばす。頭上から「いい子」と声がし、頭を優しく撫でられる。
「ぅむっ……んっ、っ……ぅんっ……ンっ」
「お前の小さい舌、っ、やべぇわ……はぁ……んっ……ぁ……」
先を刺激し、筋をなぞりながら奥まで吸いながら咥える。
「はあぁ……ぁあ……上手く、なってきたっ、じゃんっ……っ……」
「ひもひぃ……れふは?」
「っ、バカっ……咥えながらっ、喋んなっ……んっ、はあぁっ……くっ……」
何度かしていくうちに、弱い部分が分かってきて、そこをしっかり刺激する。
苦しいけど、それが私のやるべき事、だから。
「っ、もぅ、いい。壁に手ぇついて、ケツこっち向けて」
今日何度目かの行為。数は覚えられない。とにかくたくさん抱かれた気がする。
入谷先輩もなかなかだけど、私の主様も負けず劣らずの強者だ。
「めちゃくちゃ濡れてんじゃん……俺の咥えて興奮した? 可愛いな……」
私の秘部を指で撫で上げ、私の体はビクりと跳ねる。
クチュクチュピチャピチャと、無駄に大きな音を立てながら、秘部を舐め上げる。
「あぁっ……やぁ……んっ……」
「すっげぇ、んっ……はぁっ、舐めても吸っても、はぁ……お前の、やらしい汁が止まんねぇけど? エロい音、聞こえるか? ん?」
ジュルジュルと吸い上げる音に、耳が犯され、また濡れていくのが分かる。
「んぁあっ、ぁあっ、あっ、ひ、ぁ……」
温かい舌が刺激する部分から、電気が流れてきて、頭がクラクラする。
「ああっ、あっ、んぁっ、やぁっ、だめっ、やだっ、来るっ、来る、からぁっ!」
「ん? 何が?」
「気持ちいぃのっ、来ちゃっ……からぁ……」
「んンー……はぁ……この膨れてる部分を吸い上げて……中に指を入れてここを擦ってやれば……おら、気持ちいいなら、思いっきりイッていいぜ。んっ、イケっ、はっ、おらイケよっ……んはぁ……」
気持ちいい場所ばかりを責められ、体中をゾクゾクした感覚が走り回る。
「イクっ、やあっ、イクイっ、ク、イっ、ん、ンんっ……ひぃああぁぁあぁ!」
高い声がバスルームに響き渡り、ビクビクと体を痙攣させながら、立っていられなくて床に崩れ落ちる。
荒い息をしながら、座り込む私の体が宙に浮く。抱き上げられたのだと気づいた時には、ベッドへ下ろされていた。
「しっかりしろ、まだ終わりじゃないぜ? しっかり中締めて、いい声で鳴けよ、奴隷ちゃん……ン、はぁぁ……」
太くて大きなモノが入ってきて、息をするのも必死だ。それなのに、深いキスが襲いかかってくる。
最近気づいたけど、この人はやたらとキスを求める。特に、果てた後まで長いキスをする確率はだいぶ高い。
「はぁ、はぁ、んっ、すげぇ……中、とろっとろ……ぁあっ、はぁっ、たまんねぇわ、マジで……お前、最高っ……んはぁっ……」
激しく腰を打ち続ける。揺さぶられながら、繰り返されるキスをしっかり受け取める。
胸の突起を舐めて吸ってたまに噛んで、もう片方は摘まれたり爪で引っ掻いたり、その度に私の体がビクビクして、中をキツく締め付ける。
「んっ、はっ、はぁ、顔隠すなっ、こっち向け
……気持ちよくなってる顔、見せろよ……」
「ンんっ、ぁっ、ゃっ、ふっ……あぁ……」
奥を突かれながら、欲情の熱を灯した瞳を私に向ける。見つめながらされる行為は、凄く恥ずかしいから、できるだけしないで欲しいのが本音。
「はぁ……ん? もうイク? ぁあ、ちょっと、我慢、な? 俺も、イク、からっ……後、ちょっと、待ってっ……っ、ん……」
先程より激しくなる律動に、刺激の強さが増して、自然と声が大きく高くなる。
お互いの余裕もなくなってきたのが分かる。いつものように貪るようなキスで唇を塞がれた。
「んっ、はぁ、ンっ……はぁあ、やばっ……イクっ、出るっ……はっぁんっ、出すぞっ……しっかりっ、くっ、受け止めろ、よっ……」
「んンぅっ、ぅああっ、ふぅんンっ、っん、ンんんーーーっ!」
食べられるという言葉がピッタリなキスをされながら、息も絶え絶えに絶頂する。
「はっ、んっ、はぁ……目ぇ、開けろ。目、逸らさないで、しっかりっ、はぁ……見つめとけ……んっ、んっ……」
「はぁぅ、んっ、ンんっ、んぅっ……」
見つめ合いながらのキスに、また熱くなる体。これも毎回の事。熱を込めた熱く
「その顔、マジでたまんねぇ……すっげぇ、エロい顔……」
興奮しているのが分かるくらい、荒い息を混ぜた止まらないキスに、また体が震え始める。
「勃起収まんねぇ……もうちょいだけ、付き合ってな……」
再び動き出した腰の動きに合わせるように、自ら腰を動かすのは、もう当たり前になった行動。
気持ちよくなりたくて、もっとと強請るように動く腰を、しっかり捕まえて思い切り突き上げられる。
繰り返される行為に溺れながら、何度も何度も絶頂する。
自分の中から抜かれた主のモノを、口を使って綺麗にするのも覚えた事。同時に頭を撫でられる気持ちよさに、自然と胸が暖かくなる。
期待しちゃ、駄目なのに。頭を撫でられる度に、嬉しくなる。
特別でもなんでもないのに。ほんとに浅はかだ。
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