第一章

第6話

奴隷になった次の日、校長室に集められ、奴隷には首輪が渡された。



学校側の「ただのお洒落で生徒が付けてるんですよ」と言い訳しているかのような、チョーカー型なった首輪を手に、私は苦笑する。



「ほんと、犬だな……」



自傷気味に笑う私を、見つめる視線に気づく。



金髪の、可愛い顔した入谷先輩。



彼から、明らかに好意の熱を含んだ視線を感じる。凄く見つめられている。



私は少し笑って会釈をすると、先輩は驚いたように赤くなる。



可愛い。そう思った。私なんかより、首輪が似合いそうだなぁって思ってぼんやりしていると、校長室の扉が開いて、振り向く間もなく、後ろから手が伸びてきて、顎を掴まれ、そちらへ向かされる。



「よぉ……俺の可愛い奴隷ちゃん」



「んンっ……」



唇を塞がれると、周りからどよめきが起きる。そんなものを気にする事などするはずもなく、鳳月奏夢は深く舌を絡め取る。



わざと音を立てて唇が離れ、意地悪く口角を上げる。



「で? もう誰かに抱かれてきた?」



「まだ、です……」



覚悟していたのに、人前でキスされたくらいで、恥ずかしさで顔が熱くなる。



「誰か他のご主人様に抱かれたい? それとも、その辺の奴がいい? あぁ、奴隷同士とか? でもお前淫乱だから、一人じゃ満足できねぇか?」



楽しそうに笑っている姿は、まるで悪魔のようだ。



あの人達と同じ。人の不幸を笑える人。



最低だ。



また入谷先輩と目が合う。



悲しそうで、辛そうな顔。何もないのに、申し訳なくなって、目を逸らす。



「そうだ、律樹、お前抱いてやれよ」



「は? お前、何のつもり?」



「俺とのセックスが一番だって分かるには、他の男で試すのが一番早いだろ? お前、こいつ気に入ってたんだろ? なぁ、入谷先輩?」



「お前っ……」



明らかに怒った顔で拳を握りしめる。



「じゃぁ、累は? アイツちょっと性癖おかしいけど、それはそれで……。後は、林田か……壊されたら困るからなぁ、無理か」



「俺は別にいいよ? その子可愛いし」



そう言って私に近づく気だるげな先輩。



「ねぇ、君、痛いの好き?」



唐突の質問に、私が固まっていると、突起手が伸びてきて、胸を掴まれた。



「ぃた……ぃっ!」



「あぁー……可愛いぃ……もっと、痛がってよ……」



離された手が次は突起を探し当てて、強い力で摘まれる。苦痛に顔が歪む。



「ぃっ……あっ、ゃ……」



痛みで体が自然と後ろに逃げる。それを阻止するように、腰がもう片方の手で引き寄せられる。



「奏夢、この子やばいね……可愛すぎ。ねぇ、君、素質あるよ。俺の奴隷になる? いっぱい痛くしてあげるよ?」



「やめろよ」



その声に、手の力が緩み、私はその場に座り込む。



「俺が先にこの子気に入ったんだから、俺がもらう。この子は譲らないよ。大丈夫?」



そう言って優しく立たされる。



つまらなそうに元の場所に戻る東部君。それを楽しそうに笑った鳳月奏夢。



「まぁ、せいぜい頑張んな。多分そいつは俺のとこ帰ってくる、絶対、な? それまでは、専属待ってやるよ」



私をじっと見つめて、自信満々な顔で挑発する。



「行こ」



入谷先輩に手を引かれ、校長室から出る。



何も言わず、ただ手を引かれている。違うのは、鳳月奏夢より歩く速度がゆっくりで、歩きやすい。優しい人なんだろうなって思う。



この人の専属になれば、勘違いする女子が多いんじゃないだろうか。

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