第3話
校長先生が素早く立って、ゴマをするかのように笑顔で彼に近づいた。
「いやいや鳳月君よく来てくれたねぇ。奴隷側が決まったよ。また書類を用意しておいたから、目を通しておいてくれるかね」
「あ? 面倒くせぇな……」
心底どうでも良さそうな顔で、髪を搔き揚げ、こちらを向いて私達に目を配る。
なるべく目が合わないように下を向く。
「今回女多いじゃん。よかったなぁ、林田。部員の世話、させれんじゃん。色んな意味で」
そう言って悪魔のようにニヤリと怪しく笑った。林田君は特になんの反応もせず、小さく「っス」と言った。
とりあえず奴隷は明日から行動する事になり、私達は解散を言い渡され、一人一人足早に部屋を出る。
私も部屋を出ようとした。
「そこのちっこいの、ストーップ」
多分、ちっこいのとは、私の事だろう。明らかに奴隷側で小さいのは私だけだから。
最悪だ。最後の最後で、厄介な人に見つかってしまった。
仕方なく振り返ると、切れ長の鋭い目が私を射抜く。
「お前、一年?」
「二年です」
「え、タメじゃん。お前みたいなん二年にいた? いたらすぐに気づくはずなんだけどな……」
近づいてきた。無意識に体が強ばる。
顎を親指と人差し指で掴まれ、上を向かせられる。
「よく見たら可愛いじゃん。お前、処女?」
唐突な質問に、モヤっとしたけど、我慢して小さく「はい」と答える。
「お前みたいななんも知らねぇ様な奴ってさぁ……精液まみれでぐっちゃぐちゃにして、むちゃくちゃに犯したくなるんだよな……加虐心てやつ? やべぇ……考えただけで、たまんねぇ……」
舌なめずりをして、恍惚の表情を浮かべて笑う目の前の男に、嫌悪感しか感じない。
そこへすかさず金髪の彼が割り込んでくる。
「ちょ、ちょっと待った。その子は俺が専用狙ってるから、手ぇ、出さないでよね。奏夢ならいくらでも女の子いるじゃん。こないだ女の子譲ったじゃん。今回は大人しく譲ってよ」
「あ? 俺が譲ると思うか? ふざけた事言ってんじゃねぇぞ」
「奏夢」
「しつけぇ。消されてぇの?」
言葉に詰まって、入谷先輩は眉を寄せた。
やっぱりこの人は駄目だ。そして、私も終わった。
私の顎を離し、頬に指を這わせた鳳月奏夢は、すぐに私の手首を掴んだ。
「はい、おいで、奴隷ちゃん」
引っ張られるように部屋を出て、廊下を歩く。歩幅が合わずに、何度も転びそうになりながら、必死でついて行く。
「あ、あのっ……ち、ちゃんとついて、いきます、からっ、手をっ!」
「だぁーめ」
呆気なく却下され、引きずられるようにして着いた場所は、空き教室。の、はず。
教室にしては、机は2、3個しかなくて、真ん中にソファーが置いてあり、窓際には何処から持ってきたのか、一人用より少し大きなベッドがあった。
ソファーにドカッと座り、広げた足に手を置いて、自分の膝をポンポンと叩いてみせる。
「ここ、おいで」
奴隷は明日から、なんて言う決まりなど、この人には関係ないんだろうな。
分からないように溜め息を吐き、大人しく従う。
言われた場所、膝に腰掛ける。
「従順じゃん。でも、あんまり従順すぎると、ちょっとつまんねぇな。なぁ……その諦めたような顔、どうやったら崩れんの?」
耳元で低く言われ、ゾクリとして体を捩る。
「とりあえず、乱れとく? 奴隷ちゃんの処女、俺がもらってやるよ。可愛く、鳴けよ?」
抱き上げられ、落ちないように自然と首に腕を回す。それに満足したのか、少し口角をあげた。
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