第13話

高級マンションに連れてこられ、私はベッドへ投げられる。



ネクタイを外す洸輝に、こんな時なのにドキっとする。ガッシリとした体には、スーツがよく似合っていて、凄く格好いい。



ネクタイで両手を縛り上げられ、ベッドへ固定される。



「俺の……俺だけの、渚那っ……」



「洸輝……」



「好きでもないのに……そんな声で、名前なんて呼ぶなよ……」



苦しそうな悲しそうな顔で、声で洸輝が呟く。



「んむっ!」



洸輝の大きな手が口を塞ぐ。



「んんーっ、んっ!」



洸輝の名前を呼ぼうにも、洸輝に何か言いたくても、言葉は全て呻き声に変わる。



「黙っててよ。今からずぅーっと、抱きたかった渚那を抱くんだから、集中したいんだ……」



視点の合わない目でそう言って妖しく笑う洸輝が、私の制服に手を伸ばして引き裂いた。



「俺の渚那っ……俺、だけのっ……渚那っ、渚那っ、渚那渚那渚那っ……」



狂ったように私の名前を呼んで、体中にキスをする。



初めてなのに、こんな風に抱かれる事になるなんて、考えもしなかった。



私がちゃんとしなかったから。私が弱いせいで。こんな事なら、もっと早く愛してもらえばよかった。



涙が止まらない。



私をちゃんと見て、洸輝。



「んっ、んんっ、……ふぅっ……んふぁ」



露になった胸に、舌が這う。先端の突起が舌で転がされると、体がビクンと反応する。



「気持ちいい? あぁー……可愛い……俺の渚那ぁ……可愛いよ……渚那……」



怒ってるのに優しいのは相変わらずで、余計に涙が出る。



怒らせて、こんな事させてるのに、好きだから、愛してるから、触られて、喜んでいる自分がいて。



「あー……こんな事なら、もっと早くこうするべきだった……あぁ、そうだ……ねぇ、ずっとここにいればいいよ。外になんて出なくていい。ずぅーっとここで、俺とだけいればいいんだ……。外になんか、出るから……あんなっ……そうだ、それがいい……」



うわ言のように虚ろな目でブツブツ呟く洸輝に、自由になった口を開く。



「そんな事、しなくてもいいよ……」



「喋るなよ……」



「好き……」



「黙れ」



「私には、洸輝だけ……」



「嘘つき」



「洸輝……好き……好き……」



「やめろっ……」



「愛してるの……洸輝……」



泣きそうで、困ったみたいな顔で私を見つめる。私は洸輝に微笑んで、また愛を囁く。



「ずるいよ……俺が渚那を嫌いになれないのを、分かってるくせに……そんな事、言うなんて……」



「ごめんね……でも、愛してるから……洸輝だけ、だから……」



小さく「クソっ」と呟いて、ベッドから降りて、拘束を解いた。



「……洸輝……」



「今……触んな……」



床に座り込み、項垂れる洸輝の髪に触れると、いつものように、大切に、優しく払われる。



どこまでも私にだけ優しい人。



「やだ……触る」



「や、やだって……」



「洸輝……好き……好き……」



わざと音を立て、後ろから洸輝の髪、耳、頬とキスを繰り返す。



「っ……さ、なっ、やめっ……」



「やめない……」



身を捩るだけで、私のキスを止める事はしない洸輝。



「洸輝……もう私は、いらない?」



「ぇ……」



「洸輝……しよ……抱いて、いいよ……」



わけが分からないと言ったような顔で、振り返る。綺麗な目が見開かれている。



「全部……洸輝のに、して?」



我ながら、ずるいと思う。こうしたら、洸輝が断れないって知っているから。



「……い、いの?」



「うん、洸輝のものに、なりたい……全部」



素早く立ち上がった洸輝が、ベッドへ腰を下ろし、どちらともなく唇が近づいて、触れた。



「ん……っ……」



触れるだけの優しいキス。想いが溢れて、気持ちいい。



「んンっ、はっ、ぅンん……っ……」



「渚那っ……ん……はぁ……好き好きだっ、渚那っ……」



貪るようなキスに変わり、キツく抱きしめられながらのキスに、自然と息が上がって、洸輝の服を握りしめる。



「服……ごめん……怖かった……よな」



「ううん、悲しかった……洸輝が、こっち見てくれないから」



「ごめん……」



痛いくらいに抱きしめられる。洸輝の体が震えている。背中をそっと撫でる。



泣きそうな顔で、見つめてくる洸輝が愛おしくて、額にキスをする。



「渚那っ……」



押し倒され、余裕がない顔で洸輝が荒い呼吸をする。



「俺、その、初めて……だけど、でもっ、しっかり勉強したし、その、ちゃんと、渚那を気持ちよく、するからっ!」



無駄に意気込む洸輝に、少し笑ってしまった。



「大丈夫。私も初めてだから、一緒にゆっくり進んでいこ、ね?」



そう言って、また小さくキスをした。

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