第8話

もう何度イったか分からないくらい絶頂を迎えた私は、体をただビクビクと跳ねさせるしか出来ず、小さく喘ぐ。



それでも体力と精力が有り余っているのか、腰を動かす事をやめない洸輝。



「やばぃ……頭、ぉかしく、なりそっ……すげぇ、気持ちよすぎて……腰が、ぁ、っとまらなっ……はぁはぁっ、はぁっ……」



汗と精液と愛液でドロドロになった下着は、もはや本来の意味を持っておらず、それすらも気にする余裕が私にはなかった。



ずっと腰を振り続ける洸輝を一瞥し、私の意識は薄れ、快感でまた引き戻されるを繰り返していた。



いつ終わるのか分からない快感の波に飲み込まれ、私は力をふりしぼり、洸輝に手を伸ばす。



届かない手は、行き場をなくし、空を掴む。



涙でぐちゃぐちゃなのに、また新しい涙が流れた。一度溢れたら止まらない涙。我慢出来ず、嗚咽を漏らして泣く。



やっとそれに気づいたのか、洸輝の動きが止まる。そして、ハッとしたように、私の状態を見て青ざめていく。



「っ! あ……あぁ……あああぁっ……俺、ごめ、先ぱっ、俺は、なんて、ことっ……」



震えた指先でゆっくり私に触れようとしてはやめ、また触れようと手を伸ばす。



どうしたらいいか分からず、あたふたするだけの洸輝。涙で視界が滲む。



「ごめ、ごめんっ、ごめん、なさっ、先輩っ、ごめんっ……」



あぁ……洸輝が、泣いてる……どうして……泣いてるの?



とめどなく涙が流れるのに、悲しい訳じゃない。洸輝に触れないのが寂しかっただけ。洸輝が私を見ていないのが、嫌だった。それだけなんだよ。



辛いわけがない。だって、洸輝が触ってくれてるのに。



機械のように謝り続ける洸輝に手を伸ばす。ビクリと、体を強ばらせ、私から離れていく。



洸輝が鞄に手を伸ばす。



洸輝が、行ってしまう。駄目。行かないで。



あなたまで、私を、捨てないで。



「み……っき……ないで……、行かないでっ……」



目を見開く洸輝。



「……捨て、なぃで……洸輝、洸輝っ、き……好き……好き……洸輝っ……」



両手を広げて、洸輝を求める。そんな私に、洸輝は恐る恐る近づいてくる。



やっと届く場所にきた洸輝を、残るありったけの力で抱きしめる。



「先輩……ぇ、あの、今、好きって、え?」



「うん、好き。洸輝好き。好き。私を、見て、洸輝……離れないで、そばにいて……」



逃がさないように、洸輝の大きな体にしがみつき、タガが外れた私は子供のように泣きじゃくる。



戸惑いながら、洸輝は優しく私の頭を撫でる。



しばらくずっとそうしていた私達。先に静寂を破ったのは洸輝だった。



「先輩っ、俺……大事な先輩にっ、こんな、事したのに……」



「どんな事してもいい。私だけを、ずっと離さないでくれるだけで、ずっとそばにいて、ずっと見ていて」



抱きしめる力が強まる。



「洸輝……」



「俺が、先輩から離れるなんて……あるはずない……ずっと、ずっと、見てきたから……ずっと、ずっと先輩だけだったから……」



いつもみたいに荒い呼吸をする訳でも、つまるわけでもなく、洸輝は真剣な声でそう呟く。そして、私の頬を両手で包み込み、真剣な目に捕えられる。



「俺の世界は、いつだって先輩だけだから」



なんて口説き文句を用意しているんだろうか。格好よすぎる。



頬が赤くなるのが自分でも分かる。顔に熱が集まる。



また涙が流れる。唇で、優しく涙が拭われる。



愛おしそうな顔で、洸輝の顔が近づく。



優しく啄むようなキスが顔中に落ちる。そして、最後に唇を捕らえた。



チュッチュッと何度も音を鳴らしてキスが繰り返される。



恥ずかしくて耳を塞ぎたくなる。でもそれは許されなくて、キスの音が耳を刺激する。



そして、いつの間にか深いキスに変わり、舌を絡め取られ、吸われ、撫であげられ、口内を犯され、体がビクビクと反応する。



背中をゾクゾクとした感覚が走り抜ける。



また秘部が濡れていく気配がした。



それでもキスは続く。キスだけでイけそうなくらい、私は洸輝に溺れてる。



いつからこうなったかなんて分からない。でも、それでいい。



「み、つき……死ぬまで……一緒に、いてくれる?」



「先輩が死んだら、俺も後を追いますよ。当たり前でしょ……。先輩こそ、死んでも離しませんから、覚悟してくださいね……」



これは純愛か。狂愛か。それとも……。

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