第4話
この感情が何かは分からない。
けど、洸輝と離れるのは嫌だなぁと思うくらいには、多分私は洸輝を大事に思ってる。
これが〝好き〟と言うなら、私は洸輝が好きなんだろう。
言わないけど。
でも、言ったら、彼はどんな顔を見せてくれるのか。
泣く? 笑う? それとも……
どこかで興奮に似た感情で、期待している自分がいる。
あぁ……どうしよ……やば……
お腹の下の辺りが熱くなる。濡れてる。
「変態はどっちよ……」
自傷気味に笑う。
さて、次はどんなご褒美を与えようか。そろそろ彼の生まれた日。
ここらで少し、進展させてみようか。
少しだけ。それでも彼には十分なくらいだろう。
また興奮している自分に、笑いが漏れた。
最近どんどん自分がおかしくなっていくのが分かる。
彼はどんな風に私に触れて、どんな風に抱くのか。
それとも、そのうち興味がなくなって、去っていくのか。
彼がいなくなったら、私は壊れずにいれるだろうか。
完全なる依存だ。私は彼に依存しているんだ。
初めての感情をたくさんくれた、唯一私を愛してくれる人だから。確実に彼は、私の黒く汚いものまでも受け入れてくれるだろう。
そんな人を繋ぎ止める為に、彼に私を与えない。抱かせたら、彼が去っていきそうで、そう考えるだけで……。
「先輩っ、なんで泣いて……」
いつの間にか流れる涙に、彼以上に私の方が驚いた。
オロオロしながら、洸輝は行き場のない手を震わせる。
触るなという私の言葉を守っているから。
「洸輝……」
「ぇ?」
「抱きしめて」
「……は?」
「早くして」
呆気に取られ、洸輝は固まる。そんな彼に私はただ無表情で言う。涙は止まらない。
私からは触れない。あくまでも洸輝から触れさせる。
もっと、もっと私を求めて。私だけを欲しがって。
許しを得た洸輝の行動は有り得ないほどに素早く、我慢してたはずなのに、その腕は優しくて、暖かい。
逞しい胸に顔を埋め、腰に腕を回す。
大きい体に収まるのがこんなに気持ちいいものなのか。
こんなに大事に抱きしめられたのも、背中を優しく撫でられたのも初めてだった。
相変わらず息は荒いけど。
やばいなぁ……もっと求めたくなる。
まだ、与えたらダメ……なのに。
グッと欲を押さえ込み、洸輝のシャツを握りしめる。
「もっと、強く抱きしめて」
洸輝の体がビクッと震える。
彼には拷問に近い行為。
分かってる。辛さしかないって事。それでも、もっと私を求めて欲しいって思ってしまう。
こんなに欲張るのも、狂っているのも、洸輝のせい。
洸輝が私を欲しがったのが悪い。私を見つけたから。
その責任は、一生をかけて……。
もっと乾いて。私でおかしくなればいい。そして、一生離れられなくなればいい。
その為なら、私は彼に苦痛すら与えよう。
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