第55話 ホーム
最悪の状況だった。
こうなってしまったらもう、お兄さんも関わらざるを得ない。
そういう状況を、彼女は意図的に作り出したのだ。
(な、何か、対策を立てないと……)
そう思ったけれど、そんな猶予をあのアマンダさんが与えてくれるわけがなかった。
一時間も間をおかず、自ら迎えにきたのだ。
「さぁ、行こうか」
「行こうかって……」
「約束だろう? 次はこっちのホームでっていう」
「一時間前にお開きになったばかりじゃないですか」
「でも次は次だ」
「こっちにも予定が……」
「それもそうだね。じゃあ予定が空いてる人だけで構わないよ」
「…………」
当然、お兄さんには予定らしい予定がない。
海外ダンジョンキャンプという飴ちゃんを差し出されたのだ。
お兄さんなら、知らない人にでもホイホイついていってしまうだろう。
「……わかりました。準備するので、ちょっとだけ待っててもらっていいですか?」
「もちろん」
私はリビングに戻り、二人に事情を説明する。
アンリが露骨に嫌そうな顔をした。
「何それ……言う通りにするの?」
「私も嫌だけど……見てよ、お兄さんのあの様子」
ウッキウキだ。
早く海外ダンジョンキャンプの詳細が聞きたいのだろう。
「私たちのいないところで誘拐されるよりはマシじゃない?」
「確かに……」
こんなことなら、「知らない人にはついていっちゃいけません」とちゃんと教えておくべきだった。
「何か持って行った方がいいものとかあるかな? 着ていく服とか、これでいい?」
浮かれ方が、急にお出かけが決まった子供のそれだ。
ダンジョンの深層階にすら、手ぶら普段着でいく癖に……。
「気にしなくていいと思いますよ。私たちは一応、ゲストなんだし。必要なものは全部、向こうが用意してくれるはずです」
でも一応、聞いておいた方がいいかもしれない。
私はリビングを出て、玄関口で待っているアマンダさんに尋ねた。
「何か必要なものってありますか?」
「そうだね、一つだけ」
全部こっちで用意する、的な答えが返ってくると予想していたから、意外だった。
「何ですか?」
「パスポート」
「……え? パスポート?」
そんなものが、どうして……。
いや、どうしてもクソもない。
パスポートの使い道なんて、ごく限られている。
今更、私たちの身分を確かめたいはずもないから、残されるのは……。
「ま、まさか……」
血の気が引いていく。
アマンダさんが、にっと笑った。
「言っただろ。次はこっちのホームで、と」
私はてっきり、あの拠点に連れて行かれるものだとばかり思っていた。
でも……。
「ラストヘイブン」
と、アマンダさんが言う。
「知っての通り、UDの
————
久々にダンジョンに潜ります(笑)
楽しみにしてくださる方は、ぜひ⭐︎⭐︎⭐︎をよろしくお願いします!
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