第7話後編 荒野の三人、夢のマイホーム
再びラウンジに戻って来た俺達。
無事に俺の奴隷になれたってんで他の奴隷達も笑顔で二人を祝福しているようだっった。
まあ、あのツインテ幼女のニウと件のハーフゴブリン娘が仲が良くてお互い喜んでいる分には解るが…あの強面リザードマンも人気があったんだなあ。
初老とか中年くらいの男の奴隷の中には別れを惜しんでか涙を流している者までいるくらいだ。
そういやムールの親父さんが「古株だ」とか言ってたっけ?
「おっと。そうだった」
そんな奴隷達を穏やかな顔で眺めていたムールが慌ててあのテーブルの上に戻された二本の鍵を俺に寄越す。
宇宙のダークマターの如き真っ黒さですね(小並感)
「実はその
「へぇ~…代行? 今んとこはその考えはないけど」
「そうか…それと、契約した当人がその鍵をさっきみたいに首輪に使えば…奴隷の身の上から――…
およ? 一生涯奴隷じゃなかったのか!? なぁーんだ!
……いや、少し冷静になって考えたら解ることか。
そんな解放できうる奴隷を解放しようって思う人間がそもそもいないって話だろ。
何か知らんが、口の中が苦くなってくる。
「自由の身か。……興味ある?」
俺は少々意地の悪い質問と思いながらも二人を見やってそう質問してみた。
だが、その反応は極端と思えるほどの
巨漢リザードマンは横に軽く一度、ハーフゴブリンの少女に至っては、「おい首がもげるぞ」と俺が止めるほど激しくスイングしての徹底した大拒絶であった。
意外だ…「てっきり奴隷なんて懲り懲りだぜ!」くらい言うかと思ったのに。
「はあ。あくまでも今後の話ってだけさ? それに今直ぐ奴隷から解放したって今度はコイツらを
あ~…そういうことか。
つまり、奴隷にとっちゃあ解放イコール放逐みたいな感じにもなっちゃうのか?
ポイ捨ていくない。無責任!
そもそも元も取って無いのに手放すわけなかろうがですよ…(ゲス顔)
あ。そうだ!
「晴れて俺の奴隷になったことだし。奴隷番号の二号とか三十六号とかで呼ぶのは俺的にはないからさ。二人の名前教えてよ? 何か人造人間みたいじゃん?」
「人造…? エドガー様、それはどういった者のことでしょうか?」
しまった。ついうっかりさんだった…。
テュー。悪いが俺はそのプリミティブな問い掛けを完全にスルーするぞっ!
さて、先ずはリザードマンの二号からだな(放置)
「……名前は無い」
「嘘ぉ~ん」
イキナリの塩対応なんだが?
いや、普通に名前が無いってどういう事よ?
「いやなあエドガー殿。意外と人間種以外じゃそう珍しいことじゃねんだコレが。リザードマンは名前ってよりは二つ名みたいなモンでまかり通ってるみたいでな」
「そ…そうなのか(異文化ァ) じゃあ、何て呼ばれてたの?」
「…………。……かつては
「ご、ごかべ?」
俺がその言葉の意味が理解できず混乱してるとクスクスと笑うムールの部下が俺達の居るローテーブルに何やら羊皮紙のようなものを置いて寄越した。
~~
~~~~女神の涙(※海)~~~~
\
/ ̄ ̄ ̄|
/ ̄砂漠地帯\ ~~~
ああコレ! 商人ギルドでもチラホラ見掛けたなあ。
この異世界ウーグイースの“世界地図”だ。
……正確な描写じゃなくて非常に見辛いだろうがそこは勘弁願おう。
地図の北と東には海があるが、西と南にまだ陸地が続いてるようだが…それ以上の地理については未だ定かではいようだ。
ウーグイースには――
人間(種族名としてはサピエンス)主体の国が中王国、東王国、西帝国、北皇国、南公国だ。
その内、北皇国を占める主要種族の約半数が獣人種族。
南公国は亜人種族らしい。
竜王国は北皇国と通称“女神の涙”と呼ばれる難所らしい海を挟んだ先にある最強の種族である竜種が支配する地だとか。
亜人国はまんま亜人種族主体の国(とういか連合?)ってことか。
その亜人ってのにリザードマンとゴブリンが含まれている。
で、そのリザードマンさんの異名の元となった五壁って何ぞ?
「コイツはもう五十年近く前の四国戦争で一番激しく争っていた
四国戦争とはどうやら
「でな」とムールの親父さんは前置きしながら楽しそうに地図の上へとツマミで出されていたナッツを置いていく。
~~
~~~~女神の涙(※海)~~~~
✹
/ ̄✹ ̄|
/ ̄砂漠地帯\ ~~~
「どういう意味があるんだ?」
「そこには建築技術が進んだ現在ほどじゃないにしても、戦時ってことでそれなりの国境間を仕切っていた防壁と無数の砦があった。その存在でそれまで細々とその壁近くで互いに押したり引いたりの膠着状態だったらしいんだがな……コイツはあろうことか単身でナッツを置いた場所、五つの要所をぶっ壊して回ったのさ! 信じられるか? あの堅く巨人の肌のように分厚い防壁を体当たりだけで
「マジっスか(戦慄)」
「……主人よ、誤解がある。流石に体当たりだけでは無理なことも度々あった。当時は得物も当然使った」
いや、それにしたってスゲーでしょうよ?
で、彼のそのトンデモない覇業によって、ここぞとばかりに互いに流れ込んだ各国間の争いは激化した。
だが、その勢い任せの乱れた戦況に主に火種の元であった
これにより、一部の者は戦争を百年早く終わらせた英雄だと彼を讃えたという。
激闘の末にこの
「まあ本人は英雄なんざ真っ平御免らしいがな。だから。好きに呼んでやったらいい」
「成程?」
俺は改めて彼を見やった。
巨体のリザードマン…
ピンクじゃないから多少色違いではあるがあのキャラクター像にピッタリとハマるんじゃないか?
「そうだな。じゃあ! クロコダイ……いや、やっぱりダンディーにするよ」
ということでネタが古過ぎるとは思ったが奴隷二号の彼の今後の名前は、“ダンディー”に決まった。
別にあの俺が好きなピンク色の鰐男が作中やたら不遇な扱いを受けていたことを不憫に思ったからじゃないと…敢えてこの場では発言しておく。
それに重低音声の渋いイケオジを彷彿させなくもない彼には適した名前とも我ながら思ったし。
結局、鰐だけどな!(笑)
「じゃあ次は君だが…」
「アタシは…名前があるデス。……ぁん、ん、ンジ…デス」
「何時です?」
「いえ、エドガー様。きっと
「へえ、そうなんだ? じゃあ、これから宜しくな。ンジ!」
「あっ、っはい!? 精一杯頑張るので
涙を浮かべながら何度も頭を下げる奴隷三十六号の今後の名前は…いや、彼女の本当の名前はンジだった。
そして、それを見守っていた周囲からパチパチと温かい拍手が送られ、俺達はムール奴隷商一同に見送られてその場を後にするのだった。
「さて、では早速店舗候補の物件の方へ参りましょうか。実は勝手ながらこれ以上の好条件はないと半ば購入して頂く想定で押さえている物件がございますので…」
流っ石ぁ! テューさんは優秀が過ぎるなあ。
「そうだな! よし着いて来いっ! ダンディー! ンジ! 俺達の
「承知した。我が主人よ」
「はいデス!」
無事に奴隷も手に入って気分上々!
俺は足取り軽くテューが言う好物件へ向かって移動開始した。
$$$$$$$
「エドガー様。着きましたよ」
「…はい?」
――…そこは一言で言うならば、
見渡す限り点在する瓦礫と石くれ。
風が吹く度に地面に堆積していたであろう大量無数の土埃が舞って俺達に降りかかる。
俺の口内と鼻腔内が既にその砂に侵されていることだろう。
さっきから数秒毎にペッペッってやってるからね?
「ごっご主人様…これからアタシ達が住まわせて頂けるという、その、建物はどこデスカ?」
「……さあ?」
*リザルト*
★資金(※金貨と金貨以上のみ記載)
現金:金貨997枚(1億9940万リング)
銀行:金貨846枚(1億6920万リング)
★物資その他
魔法収納の革袋(汚)
飴色のスーツ(装備中※60万リング)
★雇用(扶養)
ダンディー(護衛奴隷※2000万リング)
ンジ(従業奴隷※1000万リング)
★身分・資格及び許可証
商人ギルド三等級商会員(全国共通)
★店舗(不動産)
現在は未だ無し
★流通・仕入れ
現在は未だ無し
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