第5話 奴隷買いに行こうぜっ!
――…そして、夜が明けた!
ちゃらちゃちゃちゃらっちゃあ~~ん♪
まあ、そんな古典的な演出なぞどうでもいいか。
俺の異世界生活の二日目が始まった。
…ふぃ~。昨日は正直生きた心地がしなかったぜ。
いやさ、“お前あの美人受付嬢のオッパイしか見てなかった上に赤ちゃん並の癇癪起こして考え無しに大金出したろ?”って、思っているんだろう諸君。
実は、俺もだ。
いやいやっ言い訳させて欲しいんだがなあ。
確かにギルドの受付でちょっと数分間ほど視線があの美人受付嬢の胸部に向ってしまったのは認める。
アレは男女関係ないレベルの不可抗力だ。
が、問題は数秒後に俺の眼に何やら
◉サピエンス/女(20)
◉タレント:魔女
◉スキル:呪術、魔力感知
はいコレです! コレがあの受付嬢のオッパイの前に急に出てきやがったんだよ!?
は? 『魔女』? なんコレェ~でしょうよ。
良く取り乱さなかったと自分を褒めてやりたいくらいだよ!
恐らくだが、俺が女神から与えられた『鑑定』スキルは対物だけじゃなく対人にも
テンプレの名前とかは出て来てなかったようだが、種族、性別、年齢、タレント?は良く解らん、最後にスキルが俺の意思を介さず鑑定できてしまったのだ。
サピエンスは…多分そのまま人間種のことだろう。
へぇ~二十歳だったのか。
その割には色々と落ち着いてんな(デリカシーゼロ夫)
タレント…まあ、職業とか適性とか?だろうか。
にしても魔女ってなんだよ…そこはせめて女魔術師とかじゃないんですかね?
そして、スキルは『呪術』と『魔力感知』。
金貨とかの対物と違って
にしても『呪術』とか怖っ。
そんであの豪奢な部屋に連れてこられた時もビビったよ…。
だって
しかも俺の座ったソファーの後ろとドアの側に…もう異世界とか関係なくホラーだよ。
何か視界が
そりゃあ気が気じゃなくて膀胱がマックス限度に達するまで紅茶をガブ飲みするしかなかったんだもん。
そいで一番ヤバかったのがあのハゲ爺の野郎だ…。
◉サピエンス/男(65)
◉タレント:大量虐殺者
◉スキル:鑑定、魔力感知、倉庫 他
なあんじゃコリャアーッ!?(某探偵風に)
『大量虐殺者』という世に放たれたままであることを許されないようなパワーワードもさることながら、多分と俺と同じ『鑑定』スキルまで持ってるとんでもねぇモンスター爺だったのだ!
しかもスキル欄のとこの“他”ってなんだよ! まだ何か持ってんのか!
ちゃんと仕事しろっ俺の『鑑定』スキル!?
……恐らくもう俺の素性までとはいかないが、『鑑定』と『翻訳』のスキルを持ってる事とかはバレてしまってんだろうなあ。
チクショオー! あんな化け物こんな最序盤で出てきていい奴じゃないだろう…。
だから俺が泊まらせて貰ったこのスイートルームみたいに豪華な(憶測だけど)部屋に何とか逃げ込んだ後、就寝前に何度もドアの施錠を確認したり隠しカメラ的なものがないか探しちゃったよね。
正直言ってこんな怖い場所にこれ以上居たくない。
今日中に安全な避難場所を見つけねばならない…!
――コンコンッ
(ひィ!?)
「おはようございます。――…テュ・テュ・ヴィ・ン・タ、です。失礼しても宜しいですか?」
「……はぃ」
噂をすればコレだよ…あ~心臓が持たねえ~…。
絶対このオッパイも只者じゃないからな。
きっと恐ろしく迅い手刀とかで俺の首とか簡単に落とせるに違いない(疑心暗鬼)
「本日は打ち合わせした通り、私…テュ・テュ・ヴィ・ン・タ、がエドガー様をご案内させて頂くことになります。拙いこともあるかと思いますが、精一杯御力になれるよう尽力致しますので何卒宜しくお願いいたします」
「あ。よろしくお願いしまッス」
そして、あからさまに彼女の機嫌は良くないと思える。
原因は十中八九、
昨晩、これまた商人ギルドのタダ飯で俺が三等級商会員だからってんでそりゃあ御馳走が出たもんだから腹がはち切れるちょっと前まで喰ってやった後のことだ。
――コンコンッ
俺が部屋で壁掛けの館内図を眺めてもしもの脱出経路を確認したり、それに飽きてまったりしてた時だった。
急に部屋のドアがノックされたもんだからホイホイ出てみたらさあ?
「急に申し訳ございません…少し、
と、上目遣いチチビンタちゃんが俺の部屋にやってきたじゃあーりませんか!?
……まあ、普通なら「どうぞどうぞっ(食い気味)」で彼女をお部屋にイン!させるんだろうけどさあ。
「あ。大丈夫ス」
――バタン
俺は呆ける彼女の顔から眼を逸らしてドアを閉めて鍵を掛けたよ。
…すみません。まだ、死にたくないんです(涙)
だってさ…もう鑑定しちゃったからさ…無理だよ…っ!
絶対アンタ暗殺目的じゃん!?
俺は心の弱い自分が悔しくて高級フカフカ枕を涙で濡らした。
その数十分後。
――コンコンッ
「……えぇ~?」
また誰かきちゃったよ。
開けたら今度は全く知らない可愛い系女子がシルクのバスローブ一丁でドアの前に立っていた。
だが、その本来愛らしいはずの表情は完全に死んでいる(普通に怖ぇよ)
「どう? 今晩?」
直球過ぎやしないか?
「いやあ、急にちょっと…」
「オッケー。私にだって選ぶ権利があるんだから」
「ちょっ」
――バンッ
今度は相手からドアを勢いよく閉められてしまったので顔をぶつけた俺は暫く床に這いつくばって静かに泣いた。
俺が何をした?
そして、夜も更けた深夜。
――コン……コンコンッ
「…………」
俺がそっとドアを開けると今日顔を合せたばかりの美人受付嬢が極薄のシースルー姿で耳まで真っ赤にして震えている姿があった。
…こんな夜更けに何しての、この人? 夜這い?
というか泣いてるんだが?
え。 この状況、もしかして俺が悪いの…?
「…話は聞きますんで。一度着替えてから来てくれる?」
「…………(コクリ)」
俺は二度目の襲来で結局折れて入室を許可してしまった。
三度部屋を訪れた彼女に改めて詳しい経緯を聞けば、まあハニトラですよね解ります。
こんな冴えないパンツ男に初見で惚れる女などもはや不幸であろう。
それにしてもあのハゲ爺、部下で速攻色仕掛けとか…エグイなぁ~…。
「申し訳ありません…グスッ」
「もう良いよ(胸部を凝視)」
勿論、俺は“僕は異世界から遊びにきちゃいましたあ~”とか。
“この小袋、ちょっと汚くて臭いけど女神様から貰ったんだよお~”などという情報は吐かなかったし、きっと言ったら言ったで彼女の手刀が俺の首に飛んでくるに違いない(疑心暗鬼)
なんか彼女の様子が同情を引く為の演技にも見えないので、その後は他愛もない雑談や次の日からあのハゲ爺からの指示で彼女が俺に市内を幾つか案内することなどを聞いて軽い打ち合わせなどをしたりした。
…アレ? ならちょっとは打ち解けられたんじゃね?
と思っているようだね諸君?
だがね? 人は愚かな生き物…過ちを何度も繰り返し、そして繰り返す!
ぶっちゃけ、「チチビンタちゃん」って素で呼んじゃったんだよね。
しかも二回も。
エヘッ!
――…反省はしているっ!(白眼)
まあだからちょっと朝から彼女は御機嫌ナナメなんだろう。
きっと時間が全てを解決してくれるさっ(悪)
それとこの異世界は多少のセクハラに寛容で良かった。
じゃなかったらもう昨日二回死んでるからね!
さあっ朝のタダ飯も食ったし。
張り切って出掛けようじゃないか!
「じゃあ行こうか。チ……」
「…………」
ごめんなさい、死にます(そして静かに目を閉じる)
「…私のことは、テューと呼んで下さって結構ですから」
「そう? 悪いね? よっしゃ! 早速外に繰り出すかっ! ヒャッハアー!」
俺は堪らずに駆け出した!
「あ。エドガー様、少しお待ち下さい。先ず、最優先で購入して頂く品がその…ございますので…」
$$$$$$$
「ぬあー。金貨三枚も取られたぜ」
「お似合いだと思いますが」
「え…そう?」
綺麗な女性に自分の身なりを褒められると社交辞令と解っていても嬉しくなっちゃうよねぇー(照)
この謎の布とも革ともつかない素材できた飴色の上下のスーツ。
というよりはちょっとした貴族服に近い造りだな。
コスプレしてるみたいでちょっと恥ずかしい…。
昔、就職活動で袖を通したリクルートより断然着心地が良い。
ってそうじゃねえ!?
服屋で言われるがまま着せられたスーツと肌着一式買ったら六十万リング以上掛かってしまったんだが?
そう、俺は彼女にギルドの玄関で止められるまで自分がパンイチであることを忘れていたのだ!
ちょっと浮かれ過ぎたな…。
だが、なかなかにこれは高い買い物だろう。
ま。いつまでもパンツ一丁でいられないからコレはコレで良かったと思う。
「これでも安く買えた方でしょう。一般市民は主に古着を購入したり、修繕して回し着しています。新品の服やオーダーメイドとなるとそれなりの値にはなりますから」
「へえ~」
それとこの服の御代はテューが払ってくれました。
いや、正確には俺が商人ギルドに預けた金をギルド経由で支払うから安くなったり何かとお得な特典があるからって理由で何故か俺が直接支払うのを止められてしまっているだけなんだが。
…傍から見て、いい歳した男が若い女性に金払って貰うとかちょっとモヤモヤするなあ。
「さて、身なりが整ったところでエドガー様」
「はい」
何故か既に俺が彼女の下になる構成が板についてきた。
「エドガー様は店舗経営の食品なども扱う雑貨商…を一先ずは目指されるということですが。それには先ず店舗となる物件と従業員雇用が必要不可欠。という話で宜しいですか?」
「うん」
そう、取り敢えずだが、俺が商売を始めるとすれば過去に長年勤めて来たコンビニバイトのノウハウを生かせる……てか、まんまその営業形式の小型スーパーマーケット。
そう! まさかまさかの異世界KOMBINIなんてやれたら面白いんじゃないかと思ったわけだ。
が、店長以上になったこともない平バイトが生意気にどこまでやってのけられるか…そこは正直判らない。
そもそも俺の世界とこの異世界では環境が余りにも異なるだろう。
だが、やってみたい。
まるでガキのような理由だが…それしか思い浮かばなかったんだよなあ。
別に好きで好きで堪らないって気持ちなんてミリも無かったと思うんだけどなあ。
でも、きっと元の世界の俺を忘れたくないって気持ちがあるのかもしれない。
「? エドガー様」
「おっとすまない。続けてっ」
「取り敢えず準備すべきことは沢山ありますが、本日はその二点に絞って行動することになります。取り敢えずは先ず必要な人材を用意すべきかと思います」
アラ? 意外だな。
てっきり不動産巡りが先かと思ったんだがね。
「実は物件候補は既に目途がついておりますので、先に人材を集めるべきでしょう。人材と言っても単にエドガー様の店舗経営に関わる従業員のみではありません。それよりも必須となるのは護衛です」
「護衛か……要るの?」
「要ります」
…即答されてしもうた。
「こんな事は余り言いたくはありませんが、多種多様の人間が集まるこの城塞都市アーバルスは豊かである反面。安全な場所ばかりではありません。そして今後エドガー様が扱われる店舗は少なからず影響を受けざるを得ません」
何で? そりゃあ安全で日当たり良好な場所は既に大手の商会が押さえているからです。
そしてその悪漢共の確たる標的が商会員。
理由、金持ってそうだから。
これに尽きる。
だから自分の身を守るために店だけじゃなく俺専用の用心棒を雇えってことね。
「そういやあ、アイツらを雇うって話もアリかもな」
「エドガー様…
何かテューが凄んで来たので包み隠さず話しちゃいました。
昨日、俺を門のとこから商人ギルドまで強制連行したあの門衛バイトの冒険者コンビのことだが。
「成程。我ら商人ギルドよりも先にエドガー様と接触した者がいたのですね…」
何故か俺の言葉に目を細めたテューがチラリと路地の方を見やると数人の人物が連動するように路地裏へと姿を消した…気がするのは俺だけだろうか?
「ちょっと! 単純にギルドまで案内して貰ったついでにした話なんだからな?」
「わかっております」
……あの二人の無事を祈ろう。
「では、改めて人材についてですが。もし特に御希望が無ければ当ギルドから適確な者を責任を以って選定しご紹介させて頂きますが?」
「うぅ~ん」
いや、商人ギルド…多分だが、あの
正直、お断りしたい。
だが安心してくれ諸君!
既に言い訳…じゃなかった具体的な解決案は思い付いているのだよ。
「あっいえ…確か、エドガー様は何やら思案なさっていたようでしたね。どうぞ、お考えをお聞かせ下さいませんか」
ふむ。じゃあテューにそこまで案内して貰うとしようじゃないか。
「じゃあ…――
*リザルト*
★資金(※金貨と金貨以上のみ記載)
現金:金貨997枚(1億9940万リング)
銀行:金貨996枚(1億9920万リング)
★物資その他
魔法収納の革袋(汚)
飴色のスーツ(装備中※60万リング)
★雇用(扶養)
現在は未だ無し(※奴隷購入予定)
★身分・資格及び許可証
商人ギルド三等級商会員(全国共通)
★店舗(不動産)
現在は未だ無し
★流通・仕入れ
現在は未だ無し
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