第48話
「叶崎お疲れ。また来週な」
いよいよ最高の友達との別れの時がやってきた。悟られないように、僕は無理やり笑顔を作ってみせる。
「そうだね、また来週。今週色んなところで遊んだことは、一生忘れないよ」
「オーバーだなぁ、まだ遊び足りないだろ。お前だって気になるとことかあるだろ?」
「そうだね、4人で関西のテーマパークも行きたいし、海とか花火とかも。あとは穂苅君と花房さんの結婚式に行きたいかな」
「おいおい、未開地に足を踏み入れたがるのはやめておけ」
駄目だ、目が潤んでくる。辺りが夕暮れで薄暗くて良かった。歪んだ顔を見られなくて済む。
「もし、自分の死ぬ日時や方法が自由に決められる会社があったら穂苅君は依頼する?」
はぁ?と驚いた大きな声が辺りに響く。
「なんだそれ、何かの小説の話か?」
「そんなところ。死ぬ日を何十年後に設定したとして、これから出逢うはずの大切な人とは巡り逢えない条件なんだけど、死後には亡くなった人と必ず再会できる」
「へぇー、面白い話だな。でも俺は依頼しない」
「どうして?」
「単純だ。誰かに寿命をいじくられるのも運命を変えれるのも嫌だから」
「亡くなった人とは二度と会えなくなるのに?」
「そんなの当たり前だろ、まぁ弟には会いたいけどよ。じじいになって死ぬまで待たせるのは悪いだろ。それだったら生まれ変わってもらった方がいい」
「……穂苅君ならそう言うと思った」
一言発しただけで泣いてしまいそうだ。でも、今伝えなきゃいけない。彼の真正面で両手を広げて見せる。
「僕、まだ透けて見えるかな?」
穂苅君は前のめりになってじっと僕を凝視した。眉間のしわが影になっている。
「いいや、透けてない。しっかり見える」
「ありがとう。君と友達になれて、本当に良かった……それじゃ、また」
くるりと彼に背を向けて家に帰る。何て呼び止められても振り返るつもりはなかった。
「なんだよ、まるでこれっきりで最後みたいな言い方だな。おい、叶崎」
僕はまだ迷っている。もう一度だけ振り返って友達の顔を目に焼きつけておこうか、このまま振り返らず進んでしまおうか。
「月曜日学校で待ってるからな! 辛くて来れないってんなら、火曜も水曜も木曜も金曜も待っててやるよ! いつまでも来なかったら迎えに行くからな!」
気づいたら僕は振り返っていた。薄暗さと涙で視界が滲んでいるせいで、彼の姿がはっきりと見えない。
これ以上声を出したらきっと我慢できなくて嗚咽をもらしてしまう。僕は彼に最大の感謝の意を表するため、大きく何度も手を振った。
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