第14話
教室から賑やかな声が聞こえる。
蜂の巣に蟻が1匹入り込む様を想像した。僕は大勢の中に混ざるというのが嫌いだった。人と関わることが苦手。孤独が浮き彫りとなって、その場に耐えられなくなる。
だけど、この中には僕と仲良くしようとしてくれている人がいる。
その人を一度だけ信じてみようと思う。
ドアを開けた。
僕の方を一人、二人増えていき数名見てくるクラスメイト。
目が合った瞬間気まずそうにして顔を逸らしていた。あの日、母さんが死んだことはクラスメイト全員が知っている。
尚更僕との関わり方がわからなくなっているのだろう。苦笑いを浮かべながら頭を下げてくる人、僕の席から遠ざかる人もいた。まるで腫れ物に触るような扱い。わっと押し寄せて母さんのことをあれこれ聞かれなかったのは幸い。
穂苅君は窓際で大勢の仲間に囲まれて楽しそうにしている。
彼は僕をちらっと見ただけで、再び仲間と笑いながら語り合った。
声をかけられることはなかった。
予想はしていたけど、少しがっかりした。やっぱり彼と僕の世界は違う。目視できない分厚いガラスの壁が隔ててあるのだ。
そうだよ、母さんが死んだからっていきなり友達ができるわけない。可哀想だから友達になってあげる、で不本意でできる友情なんて、脆いに決まっている。
昨日のあれは、同情に過ぎないのだと自分に言い聞かせた。
教室は何事もなかったかのように賑わいを取り戻す。僕はぽつんと独り席に座っている。
あれ、何のために学校に来たんだっけ。
海原先生は早引けして医者に行ったし、穂苅君は仲間と楽しんでる。二人と話がしてみたいと思って学校に来たのに、これじゃあ馬鹿みたいじゃないか。
担任教師が来る前に帰ってしまおうか、その前に美術室へ荷物を取りに行かなきゃと考えているうちにチャイムが鳴って皆慌てて自分の席に戻る。
僕の席の近くを穂苅君達が通った。穂苅君は周りに気づかれないよう僕の机の上にそっと何かを置いていく。
何だろう、もしかしたら嫌がらせだろうか。
心臓をバクバクさせながら置かれていった物を見た。
それは小さく折りたたまれた手紙だった。悪口が書かれていたらどうしようと最悪なことばかりを考えて、嫌々ながらもそれを広げて黙読する。
「よく学校に来たな。約束通り俺と仲良くやろう。小説は読んだか? 1時限目が終わったら屋上前の階段で話そう。 穂苅」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます