第23話

口にしてもいいのかどうか考えながら言うと、薫くんはハハッと笑った。



「まさか、返事なんていらないよ。振られるって分かってて、返事欲しいやつなんている?」



まあ……、それもそうだけど……。



あっけらかんと言われ、薫くんを見上げていたわたしはつい視線を逸らした。



「そうなんだけど……。でもわたし、」


「言わなくても分かるよ。光は、彼氏のことが本気で好きなんでしょ?」



そう……。



わたしは藍のことが好き。



だから、薫くんの気持ちには応えられないのに返事もしないなんて、中途半端な事をしている気がして。



気まずいながらも軽く頷くと、薫くんは「でもさ、」と付け加え。



「あの彼氏は、そうじゃないんだろ?」


「……」


「昨日の話、そういうことなんだって思ったけど。違う?」



……違わない。



察しのいい薫くんの問に否定も肯定もしないでいると、フッと笑った声が聞こえ。



「……光さえよければ、俺はいつでもいいよ」

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