第18話

わたしが好きになった男は、母親曰く育ちも品もよくお家柄も十分な薫くんではない。



見た目が派手で、マトモじゃない友達を連れてるらしい藍の方なのだ。



これが間違ってるとは思わない。



藍を好きだという気持ちは今までぼんやりとしていた気がする。



好きだと思ってはいたけど、上手く説明出来なかったし、どれ程の気持ちなのか自分の中でもよく分かっていなかったから。



だけど、先程……藍と春ちゃんの二人が一緒にいるところを見て初めて目を背けたくなった。



そして初めて気づいた。



こうして勝手に涙が出てくる程、その光景が嫌だった。



これが"嫉妬"ってやつなんじゃないかと。



少し前まで藍が誰を好きでもわたしには関係ないと考えていたはずなのに、二人の姿を見てもうそんなこと考えられなくなっている。



今すぐ藍に電話でもしてしまいたい。



会って話したい。



気持ちはそう思うのに、どれも行動に起こそうと思えなかった。



きっと、藍が好きなのは春ちゃんで。



わたしはそれを邪魔したいわけじゃない。



自分の気持ちだけで動くのは、わたしに自分を押し付けてくる母親と同じな気がして。



そんなのは嫌。



─────勝手に出てくる涙をわたしは自分の指で拭うしかなかった。

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