第12話

「俺は、光さえよければいつでも大歓迎なので。」



そうして母親の前でハッキリ宣言する。



え、ちょっと……。



その言葉に斜め上を驚いて見ると、どうも本気らしい薫くんに優しい笑顔を見せられ…。



でもまさか薫くんが母親の前で言うとは思っていなかったので、少々驚いてると横で「なによ、そうなの〜?」と喜びを隠しもしない母親。



「薫くんみたいな子なら、こちらこそいつでも大歓迎よ!ねっ、光」


「だから、勝手に話を…」


「あぁ…そうだ、よかったら今度お食事でもどう?お母様ともお話させて頂きたいわ〜」



薫くんに機嫌よく笑顔を向ける母親は薫くんのご両親と接点を持ちたいのか、必要のない食事会まで開こうと、どんどん話が飛躍していて…。



「そんなの、しないから。何言ってんの」


「いいでしょ?うちの主人も薫くんに会いたいと思うわ。お父様もお忙しいでしょうけど、ご無理のない範囲でご一緒に…」


「ちょっとお母さん!」


「もう、なによ光。恥ずかしがることないでしょ?」



恥ずかしがってないから!



「そういうことじゃないし!だいたい薫くん家に迷惑でしょ」


「そんなことないわよ〜、ねえ薫くん」



強引な母親の誘いにどう考えても薫くんがここで断れるはずもなく、終始愛想良く穏やかに微笑んでいる。



「そうですね、母に話しておきます」



明らかに話を合わせてくれてる薫くんなのに、その返事で一気に母親はその気になった様子で……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る