第10話

「あらぁ、やっぱり?いつも娘がお世話になっております〜」



そして、薫くんの正体がわかるとあからさまに機嫌よく声を高くする母親。



……あぁ、もうほんと嫌。



「今日は二人で?」



「あ……っと、塾のメンバーでお祭りに寄ってから帰ってきたんですけど、光さんとは方向が同じなので」



「そうなの?お宅はどちらに?」



「自宅はひと駅先なんですけど、思ったより人が多くて帰るのに時間がかかってしまって…。すみませんでした、女の子をこんな時間まで…」



「ちょっと光、わざわざ送って頂いたの?謝らなくていいのよ〜。もう気を遣わせちゃってごめんなさいね」



身元がハッキリしている上に、見るからに好青年で育ちが良く、品性がある薫くんを母親はどうやらひと目で気に入ったらしく。



「もう光ったら、どうしてもっと早く言わないのよ〜」



満面の笑みを浮かべると、どうしてそうなるのか勝手に拡大解釈し始める。

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