第9話
あぁ、もう。
面倒な状況になった。
薫くんを母親に関わらせたくなく、さっと帰したいところだけどここを無視して帰すと、後で余計に面倒なことになるのは目に見えていて……。
嫌々ながらも薫くんを紹介しようと、わたしが口を開ことすると、わたしを横目で見た薫くんがこれまた穏やかな声で母親に笑顔を向けた。
「……
さすが、薫くん。
万人受けする愛嬌の良さを持ち合わせつつ、育ちの良さがそのひと言に現れている挨拶。
まあ要するに、薫くんもわたしと同じで口うるさい親を持っているのだ。
こういう時の対応で、私たちが同類かどうかというのは嫌という程顕著に現れる。
「あら、塾の……。城山さんって言ったら、あの城山病院グループの?」
そして、薫くん程の上位成績者であり、名を馳せるグループ病院の跡取り息子に目敏い母親が食いつかないわけがなく……。
それに対して余計なことを言わずに困ったように笑って頷くだけの薫くんは、相当場馴れしているように見えた。
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