第8話

***



祭り会場を抜けると宣言通り、薫くんが家の前まで送ってくれ。



「ありがとう」


「うん、また明日。」



エントランス前でひとこと二言話していると、背後から「ちょっと…光?」と聞きなれた声がして……。




最悪……。



振り向かなくても誰か分かり、渋々ながら目を向けると、母親があからさまに怪訝そうな顔で私と薫くんをみていて。



「光、なにしてるのよ。塾は?」



薫くんがいる手前、強くは出られないのかいつもよりは数段落ち着いたトーンでわたしに声をかけてくる。


とは言っても内心は隠せてない。



開口一番に出る言葉が『塾は?』って…。



ややうんざりしてると、状況を察したらしい薫くんが穏やかな笑顔を浮かべる。



「…こんばんわ」



常識的な薫くんが愛想良く挨拶をすると、薫くんを舐めるように見ていた母親も「ええ。……どちら様?」とよそ行きの笑顔を浮かべた。

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