第7話

「自分の気持ち、押し付けたいわけじゃない」


「……」


「向こうが私を好きじゃなくても、わたしは好きだから。」



笑って言うと、薫くんはなんとなくわたしの気持ちを察したのか、困ったように「……そうだね」と頷いてくれ。



「そろそろ帰ろうか……。家まで送らせて」



通りを見ると少し人の波が落ち着いていて、薫くんは立ち上がるとわたしに腕を差しのべてくる。



藍が誰かを迎えに寄越すと言っていたけど、藍もいないのに関係ないひとに送って貰うよりは顔見知りと帰った方が気持ち的に楽で。



自分で帰るという連絡だけ藍に入れ、薫くんの手を取ってわたしは立ち上がった。



「ありがとう」


「いえいえ」



王子様のような態度をとった薫くんが可笑しく、少し笑えた。



もし藍が春ちゃんを……分からない誰かを、好きなんだとしても。



わたしが藍を好きなことと、藍が別の誰かを好きなことは関係無いといえば関係なく。



私は自分の気持ちを見失わないように、強くいようと決めて石段を降りた。

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