第6話

薫くんに言われ、わたしは横を見た。



「……見えた?」


「ん?」


「わたし、落ち込んでるように見えてる?」



思わず聞き返すと、薫くんが不思議そうな顔をする。



「俺にはそう見えたけど。違うの?」



藍の思いに気づき、納得した気持ちはあった。



でも、たしかに薫くんの言う通り、落ち込んでるのもまた事実なのかもしれず……。



「喧嘩になれば、良かったのにね」


「え?」


「わたしと藍じゃ、喧嘩にもならないみたい」



藍は『俺だから喧嘩にならない』って言っていた。


その意味がわかった。


つまり、好きなら喧嘩になるって事。



自分の彼女が目の前で他の誰かに褒められり、明らかに好意を寄せられてるのが分かれば……"普通なら"嫉妬する。



だけど、藍は薫くんに挑発されたことに気づきながらも、怒りはしてない。



笑って流せるほどの気持ちが、わたしへの好意と言うことで。



「……光?」


「わたしも、薫くんと同じなのかも」


「俺?」

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