第1話 永遠の、とこしえの……二位
――魔界。
そこには魔族と呼ばれる人種と魔物がひしめく世界。
魔法。それは魔族の誰しもが持ち得る力。
魔王。それは魔界の王が名乗る異名。とはいえ魔界全土という意味ではなく、一つの国の王というだけの話だ。
だが魔王は血筋では選ばれない。その国で最も強いものが名乗る事のできる、唯一無二の称号……
先代魔王が死に、次代の魔王を国は欲した。
そこで我こそはと、魔王の座を手に入れようとする若者達が、ある学園に集まった……
魔王養成校――夢幻学園に。
そこでトップとなった者は、魔王候補筆頭となり、魔王の座に挑戦する権利を与えられる……
♢
僕の名前はエクス・リゴート。
自分で言うのもなんだが、容姿端麗、頭脳明晰、魔力に優れ、家柄もエリート。あらゆる人々から尊敬と嫉妬を集める天才児だ。
その上名門リゴート家始まって以来の大天才ともっぱらの噂だ。
親兄弟、親戚一同からも期待され、今世紀こそ魔王の座につくのはリゴート家の跡取りだと喜ばれている。
僕もまた、次期魔王を目指し日夜頑張ってる。
自分自身、魔王の座につくのは僕しかいない。そう思ってるからね。
そして僕はこの夢幻学園に入学した。ここでトップを維持し、いずれは魔王に……
――だがその野望は初日で砕け散った。
あの男が僕の前に立ちふさがったからだ。
ワイズ・デュラミス。
奴は学科、実技、全てでこの僕を上回っていた。
そして決定的だったのは……
学園対抗試合。生徒達による実践形式の試合だった。決勝の場で僕とワイズはぶつかった。
実践では負けない。僕はそんな自信をもっていた。
結果は……惨敗。手も足も出なかった。あと一歩だとか、そんなレベルではなかった。
僕のプライドや自信は粉々に打ち砕かれた……
そこから先は何から何まで二位二位二位二位。
ついたあだ名は……
「お、永遠ナンバーツーじゃねえか! おーいエンツー!」
そう、僕の学園でのあだ名は永遠ナンバーツー。もしくはエンツーだ。
「ナンバーツー! ナンバーツー! 永遠ナンバーツー! あ、それ!」
ナンバーツー音頭というらしい。この生徒Aがわざわざ考えたものらしく、しょっちゅう歌ってる。
……怒る気力すら僕にはない。負け犬街道を進む、落ちぶれたエリート……それが僕だった。
僕を煽った生徒は当然僕より成績は悪い。
僕がナンバーツーという事は、上はワイズのみだから当然の事。
でも僕はイジられキャラに落ち着いている。いい笑いものにもなっている。普通ならおかしな話なのかもしれない。僕が言われたままでいるせいもあるかもしれない。
ナンバーツーでは意味がない。それは他の連中もわかってるからバカにしてくるのかもしれない。
魔王の座は一つだけ。トップにしか得られない栄光。
つまり、僕は今のままでは魔王にはなれない。
だから僕は半ば諦めモードでも、ワイズに挑む事をやめられない。
勝てないのに無駄な事をする。そりゃあバカにされるってものだよね。
でも足掻かずにはいられない。
僕はそんな魔族だった。
とはいえワイズに勝てる見込みはなく、どうすれば良いか僕は日夜考えていた。
しかし、今日この日に一筋の光が灯る事となる……
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