機械世界最後の天然の花

「花じゃと?」


―――花、とは言われたがゴンゾウにはその最後の1輪の花を探すことになんの意味があるか理解できなかった。


「あぁ、この世界で最後となる天然の花を今の王に見せることが出来れば王の心を動かせるかもしれないんだ」

「⋯⋯なぜそう思う?」

「今の国を支配する王は不老不死以前の常識というものを知らない。それ故に国民を操り人形にするという残酷なことも見過ごすのだ⋯⋯だが王の脳は無事な以上、話は通じる可能性はある。

そしてもし天然の花を見せることが出来れば今の世の中がおかしいことの説得が出来るかもきれない」


アルファの策は親や姉から聞いた事を頼りに考えたかつて親しくした人間達を救うために考えた苦肉の策。

もたろんそれには確証などなく、無謀とも言えるだろう。

―――だが、


「⋯⋯まぁワシも退屈してたところじゃ、やれることはやろうではないか」

「―――!!本当かゴンゾウ!恩にきる!」

「うぬ、じゃがその前に何か食べ物はないかの?腹が減ってしまってな」

「すまない⋯⋯吸血鬼はもちろん今の人間は食事を必要としないからな⋯⋯いや!あれがあるでは無いか」


アルファは何か思いついたかのような顔をしたかと思えば部屋の奥から何かを片手に持ちそれをゴンゾウに差し出した。


。これはかつての人間の友より授かったペットの亡骸ではあるのだがまだ235年前のものだから大丈夫であろう」


アルファが差し出したのは235年前に亡くなったらしい猫であった。

235年前に亡くなったとは言ったが原型は保っている。

地球の猫であれば死骸になって235年も経てば原型を保っていることはある得ないが世界の仕組みが違うか容姿が似てるだけでまた違う猫という生き物なのかもしれない。


「なんじゃこれは!?猫は飲み物ではないじゃろ!」

「む?猫は液体だと聞いたぞ?液体は飲めるであろう?」

「⋯⋯?」

「⋯⋯?」


互いに不思議そうな顔を見合わせたが結局互いに理解することが出来ず話は平行線に―――とはならず大きな問題が生まれてしまう。


「これでは餓死してしまう!」


人間水さえあれば1週間は生きていけるとは言うが水すらもないのだからこのままではゴンゾウは餓死一直線⋯⋯それも老人である以上タイムリミットもかなり短い。


「⋯⋯ふむ、それならば最悪我の眷属になれば良かろう。そうすればそこからでも何百年かは生きていけよう⋯⋯いや、今の空気では数十年か?」


最悪としか言いようのない2択であった。

このような娯楽以前の問題の世界で長い間苦しめられるか数日で死ぬかだなんて。


「もうワシは元の世界には戻れないのか⋯⋯」


少し前まで退屈に思えていたような世界も今のゴンゾウにとっては楽園のように思えた。


「いや、手立てはあるぞ?」

「!?」


衝撃の事実。ゴンゾウもビックリである。


「これは噂話に過ぎないが⋯⋯ゴンゾウが倒れていた海の底には異世界と繋がるゲートがある。そしてそのゲートの前で『亀よ鏡よ刑務所よ我を救い拾え』と言えば異世界にいけるのだ」

「海の中⋯⋯それでは無理じゃ無いか」

「ん?そうとも限らぬ。だって現にゴンゾウはいるじゃないか。ならば実際に誰かが異世界のゲートを開きそこからゴンゾウを連れてきたんことになるだろう」

「⋯⋯それじゃあまさかあの潜水艦は!」


ゴンゾウは考えた。

あの時に自分を襲った潜水艦はこの世界と地球を渡って来たのではないかと。

そして潜水艦さえあれば地球に戻れるのでは無いかと―――


「アルファよ、どこかに潜水艦はないか!?」

「⋯⋯そのようなもの聞いたことないが王の城にならあるかもしれないな」


またしてもその発言に確証はない。

だが、少しでも可能性があるのならゴンゾウはそれにかけるしか無かった。


「それじゃあ早くその天然の花を見つけるんじゃ!さぁ早く!」

「『宇宙の始まりは来世からだ』⋯⋯ゴンゾウには分かるか?」


アルファは唐突にそういった。


「⋯⋯???」

「父様が最後に残した言葉だ⋯⋯我の予想ではこれが天然の花を在処を示していると思うのだ」


アルファはそう言っているがもちろん確証なんて無いしただの勘である。


「他に何かヒントはないのか!?」

「⋯⋯ない!」


残酷な事になかった。

ゴンゾウの人生最大のピンチである。

『宇宙の始まりは来世から』一体なんなのか⋯⋯まず意味なんてものはあるのか。


「来世⋯⋯宇宙⋯⋯らい⋯⋯ちゅう⋯⋯ライチュウ!?」


考えること3分、答えは出た。ライチュウだ。

ゴンゾウの頭に朧気ながら浮かんできた言葉はライチュウだったのだ。

ちなみにライチュウはあの人気アニメポケットモンス○ーのレギュラーであるピカ○ュウに雷の石を使うことで進化した姿である。

その性能は両刀配分であり素早さはまぁまぁ高く耐久は低いと、弱い部類のポケモ○だ。

火力で言うのならピカ○ュウに電気玉を持たせた方が圧倒的に強い。

―――さて、そんなライチュウが浮かんだ訳だがゴンゾウの予想は正しいのか⋯⋯






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