第13話

似合うのかな…。こういう可愛らしい服って、あまり持ってない…。前、横…と体の向きを変えながら、鏡で見てみる。坂井さん、なんて言うかな。「何でもいいんじゃねぇか」とか言うのかな。そう思うと、ムカッとしてしまった。すると、そこに試着室のカーテンを少しだけ開けて、


「雪子。まだか?」


と言って坂井さんが顔だけ入れて来た。


「キャッ」


と思わず声を出してしまうと、坂井さんと目が合った。坂井さんはまたキョトンとして私を見つめてから、頭から爪先まで全身を3往復くらい見つめきた。


「な、なに?」


すると坂井さんは腕を伸ばして私の後頭部を掴んで引き寄せると、唇を重ねてきた。


「?!」


唇が静かに離れると、坂井さんはニコッと微笑んで、


「それ、めちゃめちゃ可愛い。似合ってる。買えば?脱がしたくなる」


と言って、すぐにカーテンから顔と腕を引っ込めてしまった。私は頬を赤く染めて、茫然としてしまった。


ゆ、油断した。

可愛い、とか。

似合ってる、とか。

脱がしたくなる…とか。

本当にもう…何気に女子の心、鷲掴みしてる…!なんか、悔しい…!ムカつく!腹立つ!!


そして、私はまた鏡で自分の顔を見つめた。


そういえば、昼間とか普段は「坂井さん」と呼ぶけど、夜、エッチしてるときはたまに「理」って呼んでいる。

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