第11話

「あ?色?…特にないけど、赤とか紫は苦手かな。こないだ、滋が誕プレとか言って、赤いトレーナーくれたけど、外で恥ずかしくて着れるかってんだよ」


「坂井さんが赤のトレーナー?!滋の嫌がらせだね、それ」


私は想像したら笑ってしまった。赤Tの坂井さんはヤバいでしょ。それ、映像化できないっ。モザイクだわ、モザイク!


「雪子からもらったデスク用の置き時計、会社で大人気だよ」


「そうなの?デスクでよく寝るって言うから、目覚まし機能付きのね」


「そうそう。松林が悪戯にへんな音色にセットしてて、めっちゃ恥かいたけどな」


「松林さん、やりそう!!今度の誕生日、何か考えるのよ。ほら。再会した時には坂井さんの誕生日過ぎてたし」


私はそう言って何だか少し笑ってしまった。すると、突然坂井さんが私の後ろから肩越しに顔を出して、


「あ、その色。雪子に似合いそう」


と指差すと、私は手に取っていた服を見た。薄いラベンダー色のモコモコ生地のワンピースの部屋着だ。ノースリブで、ベージュの薄いロングカーディガンもセットになっている。


「でも、これ紫…」


「俺には似合わないけど、お前には似合うだろ?紫って言っても、それ、薄い色だし、なんか、…春っぽくも見えるし。こういうの、お前たち世代は何色っていうんだ?」


「うーん。そうだなぁ。ラベンダー色かな」


「ラベンダー…。トイレの消臭剤…」


「やめて」

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