第3話
ともかくこの人は、正真正銘の本物のいやらしいオッサンだ。普段ダラダラしているくせに、エッチとなると、無理してでも元気になるタイプだ。私を全然休ませてくれない。とことん体を開拓していく。激しくて、でも優しくて、この私がまるで飼い慣らされるみたいに。そんな坂井さんにいいようにヤラれて、逆らえなくなるんだ。そして、私もおんな坂井さんしか受け入れたくなくなる。他の人じゃ、ダメな体になっていく……。そこが、悔しくて堪らない。
私のバージンの相手が坂井さんじゃないことだけが、私にとってはずっと悔まれる。出来るなら、私の『初めて』ごと坂井さんに捧げたかった。
そう。…私の初めての人は、坂井さんとは真逆の人だった。優しくて、紳士的で、魅力的な人ではあった。不満はなかった。でも、やっぱり私には物足りないんだ。
私には優しいだけの人は、ダメなのかもしれない。なんて…。世の中の女子全員を敵に回しそうな発言は、やめておこうかな…。
現在、季節は春を迎えたばかり。桜の花が散った後の若葉が揺れる、過ごしやすく暖かくなってきた新緑の頃…。
隣で、さっきまでの野獣がイビキをかいて爆睡中。裸の坂井さんは私の方に寝返りを打って、
「う……ぅん」
と唸りながら、ゆっくり目を覚ました。
あ。
私は咄嗟に目を閉じて寝たフリをした。
「ん?あれ?もう朝?…マジかよぉ…」
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