三船の独白

第20話 三船の独白1

先輩のまさかの切り出し。


しまった、今日は知ってる人と会う予定じゃないからって、油断してたな。


・・・かと言って、今更、話を逸らすのも、ちょっと変だよな・・・





「・・・えとですね・・・自作です」


「・・・え、自作?」





観念して、自白。





「自分で作ったってこと?」





先輩が改めて確認してくる。


表情は、苦笑いで誤魔化すしかないか。





「そ、そうですね・・・はい、自分で作りました」


「・・・あれ、学部どこだっけ」


「あ、法文学部ですね」


「だよね・・・」





と言うなり、口を閉じる先輩。


ちょっと思ってたのとは、違った展開だけど。





でも、こういう時の対応に困って、知り合いに会う時には着ないようにしてたのだ。


普段の自分の様子からだと、辻褄が合わなくなってしまうから。





「・・・うん、やっぱり、すごく良い。私、素敵だと思う。他にも色々作ってるの?」


「えと・・・そうですね、Tシャツとか、キャップとか?割と何でも」


「凄いね。私、そういうの得意じゃないから、ちょっと羨ましい」





と、首を縦に振りながら、呟く先輩。


こっちとしては、服飾系が好きなのをすんなり受け入れられて、ちょっと拍子抜け。


そして、羨ましいと言ってくれた先輩の言葉に、内心、感動していた。





多分、先輩のこういう、壁を作らないところに、自分は好きになったんだな、と思う。

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