Episode 15 【BLACK PARTY】

【BLACK PARTY 1/3 】

*****


 椅子に座り、飲み物を口にするキャット。

 するとそこに、ドールがしょんぼりとした表情でやって来た。


「ドール。何処に行っていたのよ?」


「…………」


 ドールからの返答はない。

 ドールは何も言わずに、キャットの隣へと座った。


「ドール? ……」


 ドールは元気がなかった。理由は二つ。第一に、もっと純と一緒にいたかったから。第二に、キャットたちの仲間でありながら、純に“逃げて”と言った事に、罪悪感を感じていたから。


「……――分かった。ドール、また純のところに行っていたんでしょう?」


「…………」


 ドールは何も答えなかった。……――だが、否定をしない。ならつまりは、図星なのだろう。キャットはそう解釈をした。


「ドール! アクアが言う事なんて、気にしなければいいのよ! まだ“リュウ”だって帰って来てないし……」


 ドールは顔を上げ、ようやくキャットを見た。


「……でも、怒られちゃう……それに、きっとダメなんだよ……」


「今日だって結局、純のところに行ったんでしょう? 会ってるくせに、“怒られる”とか気にしても仕方がないじゃない?」


「でも……」


 オロオロとするドール……――自分の中で、葛藤をしている。


「“でも”……――何よ? どうせ今私が、“純と関わるな”って言ったら泣くくせに!」


 キャットは強めの口調で言った。──更は続けて、キャットが言う。


「どうせ泣くような奴が、生意気に葛藤してんじゃないわよ!!」


 ドールは肩を震わした。キャットに、こんなに強く言われる事なんて、今までなかったのだ。


「ごめんなさい……」


 ドールは怒られている気分になって、反射的に謝った。──また、涙目になる。


「ドール! 謝ればいいって訳じゃないのよ! 怖くて謝っただけのくせに!」


「……ごめんなさいっ……」


 ……だがやはり、反射的に謝ってしまう。


「また泣くわけ? 泣いたって私は、何もしてあげないけど? ……――もうドールなんて、知~らない!」


 キャットは立ち上がって、ドールに背中を向けた。

 ドールは目に溜まっていた涙を、ポロポロと溢した。だが……――


「……なんてね!」


 キャットが振り返って、ニカッと笑った。


「ぅっう~……キャットォ……」


 ドールの涙が、安堵の涙へと変わった。


「ドール、泣きすぎよ?」


「だってぇ~……」


「ドール! 白状しなさい。さっき私に怒られて、誰に会いたくなったのよ?」


 キャットが冷たくした理由を理解した。


「ドールは……純くんに会いたかった……」


「ホラね? そんなんなくせに、変な葛藤しても仕方ないじゃない? 馬鹿な子ね!」


「うん……」


 けれどやはり、ドールの反応は曖昧だ。


「全くもう! 世話の焼ける子! いい物あげるから、元気出しなさい!」


「……いい物?」


「見てドール! 私の手の中に、実はこんな物があるのよ?」


 キャットは面白可笑しそうに笑いながら、手に持っている物をドールに見せた。

 だがドールは、きょとんとする。


「……え? ドール、それいらないよ? ……」


「バーカ! これ自体はあげないわよ?」


「じゃあ、なに?」


「これが何だと思う?」


「……スマホ」


「これはよ!」


「え?!」


「仕方がないからドールに、純の番号を教えてあげるわ!」


 キャットは楽しそうにしているが、勝手に番号を貰うなんて、ドールには抵抗があった。


「ダメだよ……勝手になんて良くない」


「えー! 良いじゃない?」


「ダメだよ。……」


「仕方ない……――なら、私が貰っておこうかな」


 そう言ってキャットは、雪哉のスマートフォンをいじり始める。

 ……操作をしながら、ドールに話すキャット。


「ねぇドール? 私が貰っとくからね?」


「え……」


 キャットはニッと笑った。

 何故なのかはよく分からない。けれどドールは胸の中に、何かモヤモヤとしたものを感じた。


「ねぇドール? 純のこと食べちゃうかもしれないけど、いい?」


 ドールは目を丸くし、唖然とする。

 ドールの中では“食べる”=“食事”という解釈しかない。


「……でもなんだか、私って純に嫌われている気がするわ! 毎回私が現れると、苦い表情するのよね~。私が何をしたっていうのかしら?」


 キャットは話し続けているが、ドールは“食べる”が頭から離れない。


「でもなぁ……なんだかBLACK OCEANの四人、カッコイイわね? 食べたくなっちゃう」


「ダッダメだよ!! 食べちゃダメ!! そんなこと……」


 ドールは焦りながら必死だ。


「え~……ダメ?」


「〝ダメーー!〞」


「分かったわよ……分かったから。……―そうよね~? ドールは純のこと、大好きだもんね~?」


「そ……そういう問題じゃないもん!」


 赤くなっているドールを、面白そうに眺めているキャット。


「じゃあ、食べないけど、番号だけもらっておこうかな~…………――っ?! あれ?! ……え? ……」


 すると何やら、いきなり焦り出すキャット……


「〝え゛?!〞」


「キャット? どうしたの?」


「私のスマホがない?! うそ~、どこ?!」


 番号を送ろうとしたら、自分のスマートフォンがない事に気がついた。“雪哉のスマホを持っている”……――その優越感に浸っていたところ、自分のがない事には気が付いていなかったらしい。


「ない?!ない!!」


 キャットは落ち着かない様子だ。

 するとその時、キャットは声を掛けられる……


「何をそんなに、取り乱しているのですか? ……見苦しい……」


 突如かけられた言葉。声の方向を振り向くキャット。


「見苦しいですって?! 失礼ね! どこから来たのよ! アクア!」


 この場にやって来たのはアクアだ。


「何かを探しているように見えましたけど……──」


「ちょっと! 話し聞いてるの!?」


「……俺も一緒に、探しましょうか? ……」


 “アクアから、親切な言葉が……”と、キャットにとっては意外だったらしく、キャットは一瞬、思わず固まる……

 キャットのその反応……――アクアには相当、居心地が悪い。


「見苦しいから、一緒に探してあげましょうか? ……仕方がない……」


「うるさい! 別に何でもないわ!」


「人がせっかく言ってあげているのに……そういう事なら、別にいいですけど」


「──で? 何の用? “私が困っていたから、心配でわざわざ来た”……――とか言わないでよね!」


 キャットは優越感の笑みだ。“私が困っているのが見えたから、わざわざ来たくせに! 私の事が、好きなくせに! ” ……などと思っているのだろう。


「まさか。言いませんけど……」


 アクアは白けた表情を浮かべながら、即答だ。


「むかつくぅ~! だったらどうして来たのよ! 理由を言ってみて!」


「知らせに来ました。そろそろ、第二幕の始まりです──」


 ──“”、それは決して、キラキラと輝くパーティーなどではない。


 それは魔法の解けた、“BLACK PARTY”だ……――


「?! ……――――あら、楽しいパーティーの始まりね。──で? どんなのを仕向けるわけ?」


「話しに乗った奴らを、雇いました」


「フーン。調子に乗っている奴らがいたものね」


「BLACK OCEANの四天王を負かせば、自分たちの株が上がる。話しに食いつく奴なんていくらでもいる。……――アイツらも四人だけでは、何も出来ないでしょうね」


「雪哉は喧嘩、強いんだけどなぁ……やっぱり無理なのかな?」


「白谷の心配ですか?」


「別に。……ただ、考えていただけ」


「考え? ……―─」


「これからBLACK OCEANイジメが始まって、どんどん追い詰めてやる訳だけど……──それって、雪哉を私に本気にさせるチャンスだわ!」


「は? 何を言っているのですか? ……」


「どんどん追い詰めて追い詰めて……追い詰められて……──弱った心に付け込める」


 “そんな事を考えていたのか”と、アクアがキャットに、引いた表情だ。


「……そんな事を考えていたのですか? フェアじゃないですね……」


「〝NOルール〟。あの手この手を使って、落とすまでが一番盛り上がる。……――アンタもフェアに恋愛してたら、欲しい女なんて手に入らないわよ?──」


「大きなお世話ですけど?」


 アクアに向かって怪しげな含み笑いをすると、サッとキャットが立ち上がる。


「さて、じゃあ私は観戦でもしに行こうかな~」


「……ドールも行く……」


 ドールも立ち上がる。ドールはキャットの後を、ついて行こうとした。だが……──


A「危険なので、ドールはこの部屋にいて下さい。雇っている連中に、ここへは来ないように言ってありますから」


 アクアはドールを止めた。


D「……でも……」


 アクアの方を振り返って、躊躇うドール。


C「いいから、ドールはここにいなさい? 危ないから……」


 キャットもドールには、この部屋にいるようにと促した。


D「分かった……」


 二人に言われたドールは、仕方なく承諾をした。何処か悲しそうに、俯きながら……――


 こうしてドールは安全な部屋で待機し、アクアとキャットは、それぞれ部屋を出る事になる──


*****


 そしてその頃、聖、純、誓、響は、ある変化に気が付き始めていた。やけに屋敷の中が、静まり返っている。賑わっていた筈のパーティーには、人気がない。……――更にいつの間にか、生演奏の優雅な音楽も消えていた。


 屋敷に違和感を感じつつも、やはり聖と純、誓と響で対立をしている。


 そして逃げるのを止めた聖と純は、交渉に出るが……――


純「。……だから、鍵をよこせ。鍵はどこにあるんだ?」


響「連行はせずに。……だから、協力をしてくれ。情報が欲しい」


 どちらも上から目線で交渉を持ち掛けている。埒があかない。


聖「協力……ならまずは鍵を渡してもらおうか? 信用出来ねぇ」


誓「鍵……――逃げないという保証がない。情報を話したら鍵を渡す」


聖「騙されねぇ……」


響「俺らだって騙されない。……お前ら、絶対に逃げる」


純「


「「「「…………」」」」


 “実は逃げます”と、早々と白状をし、沈黙……

 聖と純、誓と響……――両二人組は、互いに互いの組を信用していない。気に入らない……――空気はピリピリとしている。

 ……──だがその時突如、静まり返っていた屋敷が、今度は騒がしくなってきた。


響「なんだ?」


 響と誓は辺りを見渡し始める……―─


聖純「「…………」」


 そして聖と純は、何が起こり始めているのかを、無言で理解した。


聖「なぁ純、もしかして始まったか?」


純「多分……」


 ──音が近くなる……

 ──奇声が聞こえる……


「「「「…………」」」」


 思わず、まだ聞き取れ切れないソレを聞こうと、四人は耳をすませる──


 ──ざわざわと、騒がしい……

 ──多人数、誰かの声………


 そしてだんだんに音や声が近くなり、ようやく言葉を聞き取れるようになってきた。広い屋敷に響き渡る、荒々しい声……──


―「ブラック オーシャンはどこだぁー!!」


―「出てきやがれ!!」


―「ブッ潰してやらぁー!!」


 聖、真顔ながら、一応困ったように、頭を抱える……


聖「あ! 少しマズイ展開だ!」


 純、あっけらかんと、腕組みをしながら辺りを見渡す……


純「俺ら、人気者だな」


 響、苦い表情を浮かべながら、思考が一周回って、呆れ返る。


響「お前らどれだけ恨まれてるんだ?!」


 誓、呆れを通り越し、気だるそうな面持ちだ……


誓「山ほど恨みをかっている事は、確かだろうな」


 更に四人で、声のする方向を眺めていると……──


「「「「………………―――」」」」


 WoW……!!


 広い廊下の曲がり角の向こうから、見るからに柄の悪そうな集団がやって来たのだった。


聖「本当の悪役登場ってやつか?」


 そして、例の悪役共の目が、聖と純の姿を捕らえた。


―「いたぞ! ブラック オーシャンだ!」


 すると……――


 『マヂか?!』『本当か?!』『確かか?!』『どこだ?!』と……ザワつき始める悪役共。

 どうやら後ろの方の奴らには、此方の姿が見えていないらしい。


―「押すな! 押すなよ!」


―「ブラック オーシャンどこだ?!」


 後ろの奴らが、押して押して……


「「「「………………」」」」


 そのぎこちない光景を、じっと眺めている四人。


―「押すなよ!!」


 だが、更に押して押して……──


 ──バタンバタンバタンッ➰☆!!!


 押された前の方の奴らが、倒れた……


「「「「………………」」」」


聖「なんだかあの悪役共、弱そうだな!」


純「もしかして、オープニング的な雑魚キャラか?」


「「「「………………」」」」


 ──更にじっと、呑気にアホな悪役共を見物している四人。


―「この馬鹿共が!! さっさと退け!!」


―「す……すみません」


 すると何やら、一人偉そうな態度の奴がいて、ソイツが上にブッ倒れている奴らに怒鳴っていた。

 少しして、ブッ倒れていた奴らも全員が立ち上がる。そして最後に……――さっきの偉そうな態度の奴が、フラリと立ち上がった。気味の悪い笑みを浮かべる、……――


「やっと見つけたぜ……ブラック オーシャン! 覚悟しやがれ! お前らがデカイ面していられるのも、今日で終わりだ!!」


「「「「………………」」」」


 さっきまで下敷きになっていた奴が、こんな事を言うものだから、迫力に欠ける……とか思っている四人であった。


「どうしたオーシャン!! ビビって言葉も出ないか?!」


純「うるせー下敷き! お前っ髪型乱れすぎだ!!」


 下敷きになった拍子に、髪型がグシャグシャになった様だ。


「だっ黙りやがれ!! 大きなお世話だ!!」


 ……その偉そうな態度の奴を、じっと見ている聖……―そして、何かに気が付いたらしい。


聖「なんだ、誰かと思ったら、丸島マルシマくんか……」


丸「なんだその反応! 稲葉! 相変わらずな奴だな!」


純「それって誰だ?」


聖「。一応……昔一緒に、長い坂を転げ落ちた仲だ!」


純「は? なんだそれ?」


 そうそれは、百合乃と聖が二回目に再会した時、対立相手だった総長だ。


丸「久しぶりだな稲葉 聖、今回はあの女百合乃とは一緒じゃねーのか?」


聖「……あ゛? そんなに百合乃に会いたかったか? 教えておいてやる。百合乃はお前の事が、〝大嫌いだ!!〞」


「「「「………………」」」」


 すると案外、ショックを受けている様子の丸島であった。悔しそうに歯を食いしばっている。


聖「そりゃ嫌うよな。当たり前だろ。バァァ~カ!」


純「(笑)!!」


 すると丸島は、キッとした鋭い眼差しを聖へと向けた。


丸「……笑っていられるのも今のうちだ! この人数差が、分からねぇ訳はないだろう?──」


 丸島が嫌味に笑う。


 丸島の後ろにズラリと並ぶ、黄凰のメンバーたち。……――全員、ギラギラとした目を此方へと向けてくる──


 “その目”は、飢えている“目”だ……――――


 ──一触即発。今にも、殴り合いは始まりそうである。


響「ぅわ~……ドイツもコイツも単細胞! 喧嘩以外の選択肢はなしかよ?! ……――誓もそう思うだろう?」


 響は呑気な表情で、誓の方を向いた。誓は気難しそうな表情をしている。


誓「何なんだよアイツら? 他にも仲間がいるかもしれねぇ……瑠璃と妹が危険だ」


 それに気が付かされ、響も真剣な表情へと変わっていく。


響「その通りだ。早く瑠璃たちと合流しねぇとな……──」


純「絵梨たちの方には、雪哉と陽介を向かわせた。

そんなに焦らなくても“結構”安全な筈だ」


聖「“結構”ってなんだ? “安全”って言えよ?」


 純と聖はあまり心配していないようだが、誓と響の心配はおさまらない。


誓「手錠の二人に行かせたのか?! 信じられねー!」


純「お前らのせいだろう! 手錠かけやがって!」


響「手錠かかってる奴らに任せておけるかよ!?」


聖「黙れ川原! お前のせいだろ!」


 すると響はがっかりとした様子で、考え始めた……──


響「まず、手錠かかってる奴らに瑠璃たちを任せられねー……だいたい、どうして喧嘩になっているんだ? この人数差、リンチだ……アイツら手錠かかってたら、真面目にヤバイ」


 渋々と、響が誓に目で合図を出した。すると、誓が手錠の鍵を取り出す。


聖「鍵持ってたのお前かよ!! クソ兄貴!!」


誓「うるさい弟……仕方ないから鍵はお前にやる」


 誓が聖に向かって鍵を投げる。

 聖はそれをキャッチした。


響「あぁ~……せっかく、せっかく! 捕まえたのに……! 俺の情報収集作戦が水の泡に……」


 響は悔しそうにしていた。


純「聖、お前はソレを持って陽介と雪哉の所に行け」


 ──聖と純の視線がぶつかる。 二人の間に、数秒の間……――


聖「了解。……純、もう、好きなだけ暴れていいぞ? ……――」


 聖がニッと、口角を上げた。


純「言われなくてもそのつもりだ」


 するとその時……――


 ─―バン!!


 話を遮り区切りを付けさせるように、わざと音を響かせながら、丸島が壁に片手を突いた。


丸「そろそろお喋りは終わりだぜ? ……――」


純「そのつもりだ」


 純が前へと歩を進める。

 取り乱す事なく、堂々と一人で前へと出る純を見て、相手側にも緊張が走った……──

 それを感じ取った丸島が、低い声を出し、唸るようにメンバーたちに言う……──


丸「お前ら、オーシャン一人におじけづくなよな? ……一人じゃ何も出来ねーに決まってる」


純「俺がBLACK OCEAN四の一、高橋 純。しっかりと目に焼き付けとけ……邪道なボンクラ共」


 冷静な瞳を狂気に変えて、純が喧嘩の渦に身を投じる──


響「アイツ正気か? ……目茶苦茶な奴だな」


 この人数差に関わらず、自ら喧嘩に飛び込んだ純を見て、響が呟いた。


 聖は鍵を持って雪哉と陽介の元へ、誓も瑠璃の元へと向かう。


 この場に残るのは、純と響。……──純はすでに乱闘中だ。


 誓と響は警察。本来は乱闘を止めなくてはいけない立場だろうが、今回は極端に止めるつもりはない。誓と響の二人だけで、どうにか出来る様な人数ではないのだ。だからあえて、四人の事も止めはしない。……――〝止められはしないだろう〟。……

この状況では、〝自分の身は自分で守ってもらうしかない〟のだから──……


 聖は雪哉と陽介の方に向かう前に、響の方へと振り向いた。


聖「なぁ川原、ヤバくなってきたら、“アイツ”の事、止めてやってくれ」


 ──“アイツ”というのは、“純”の事だ。

 そう言った聖はどこか、悲しげな目をしていた。  

 響は一瞬、聖の言っている意味が理解出来なかった。 けれど、“アイツ”というのが“純”を指している事は分かる。

 ──乱闘の中の純へと、視線を向けてみる……――


 小さな赤の雫が舞う……──


 何故かやけに鮮明に見えた、赤の色──


 自分の物ではない赤の雫が、純の顔にはねる……


 ……それを一瞬も気に止める事もない……――理性を潰した瞳――……


 ──響は純を見て、すぐに聖に視線を戻した。そして聖の言葉の意味を理解して、聖に向かって頷く。

 それを確認してから聖は走り始めた──


*****

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