第2話 魔王ーーー黒猫『ノワール』
生まれた時から黒猫と人間の混じり合いだった。半獣なのは、おそらく、大勢の父親の精を浴びて生まれた上に、神父が魔族として成って行ったからだろう。神父の父はもうどこかに行ってしまった、自我を失ったのだ。
いつしか、人間に憧れるようになった。
いつしか人間から疎まれるようになった。
言葉を覚えた。
父の愛読書だ。
この世界の成り立ちを描いた『セイショ』という稿本だ。なんでも人間の作られたのは『神』さまというものがそうしたらしい。
一生懸命、書いてある文字を声出したり、字を写したり、勉強した。
それで人間達に話をさせてもらった。
人間達は『魔王さま万歳』としか言わなかった。
そしてある日、東のレガート王国から来たという若者に出会った。
そして殺された。『魔王よ、滅べ』と言われて。
ーーー殺された、とわかったのは、、もう一度生まれたからだ。
生き返ったのだ。今度は違う姿になって。違う地方の木の下で。すでに成人の大きさなのは相変わらずだった。
今度は、白い髪の人間になっていた。(湖に写った姿を見た。)
目は相変わらず赤のままだ。
一度生まれた時のことを振り返ってみる。
文字を覚えた。
このまま、殺されたのは何か理由があるに違いない。
しかし、生まれが特殊で一体、自分が何をしたのかわからない。
確か人間は理不尽さを与えられて、不満や怒りを覚えると、攻撃的になるとセイシヨでも書いてあった。
だとすると、何か手違いがあったのだろう。
今度こそ人間と手を結ぼう。
そしてそのまま、服もなく、人街まで歩いて行った。
そこで待っていたのは、初めて見る、老人というものだった。
人間は歳を重ねると、形が変わるようだ。そういえば北の国では誰もが異形の姿だったりしたり、美しかったりしたが、“しわ“というものをみたことなかった。
正直いうと、恐ろしいと思った。
しかし、その老婆は「あれまあ!!こんなところで若僧が何してるんだい!??盗賊に見ぐるみ剥がされたのかい?かわいそうに!ウチ、近くなのよ!寄ってきなさい!!」
あれよあれよという間に、連れて行かれたのは、屋根も穴が空いてる、古びた、雨に打たれすぎてボロになっている半壊の家だった。
そんな感想を抱いてしまったが、失礼なので何も言わず、彼女の息子さんというものの服をもらった。ありがたく着てしまった。息子さん達は『中央國』という栄えた場所に出稼ぎに行ったきり帰って来ないだとか。
それを聞いた、ノワールは、ありがとうございます。といって、なぜか身体が勝手に老婆の頭を殴打していた。父から教わった、人間の殺し方だ。勝手に身体が覚えていたらしい。
それでも、自分にとってもてなしをしてくれたのに。。なぜ、僕はこの老婆を殺したのか。
頭に声が響く。母さんの声だ。
(ノワール、、愛しい息子!!!!人間に騙されて殺されるなんて!!!)
あゝ、今頃、泣いていたのか。母さんは。そういえば僕は『人間』に殺されたのだ。騙されて。
だからコレは正当防衛だ。
そう嘯いて。自分と他人を騙して。
老婆の血を舐めて舐めて飲み干す。
不味い。美味しくない。
そうだ、半獣の時は人間の生き血をすすっていた気がする。
そうすれば、いいと、教わったのだ。
ーーーーあゝ、人間を殺していたのか。。だから『ユウシャ』と名乗った、あの凛々しい若者に殺されたのか。
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