第5話

『で?どこから来た迷い猫かな?』



余裕そうな表情とか、たまに見せるニヒルな笑みとか。もう何をどうしたって、私の目には光って見えて。咲人さんの全てが別次元だった。



『そういえば私、一人暮らしなんですよ』


『ふぅん』


『だから、ほら。私を本当に家で飼えたりするんですが……どうですか?』



興味ありませんか?と。だんだん小さくなる声に、自分への自信のなさが現れている。悲しいかな、全てが平均的な私に、白馬の王子様をオトすほどの魅力はない。



『親は?』


『共に元気です。遠方の高校に通ってるから一人暮らしなだけです』


『ふぅん。じゃあ飼えないわ』


『え』



ガーン、と効果音が脳内に響く。と同時に「そりゃそうですよね」とヘラリと笑ってみせた。だって大人は、ウジウジしてる女なんて嫌いでしょ?自立してる女の人が、好きなんでしょ?


って思っていたのに。



『今飼ってる他のネコ追い出すまでは、飼えない。だから待ってて。あ、ネコだから〝待て〟はできない?』


『で、できます!待ちます!ずっと待ってます!』

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