第6話
彼女持ちなんだ、って事実にショックを覚えるよりも。今の彼女よりも私を優先してくれる嬉しさに、我を忘れるくらい興奮した。
だって、ようするに。
咲人さんの家に住んでいいってことでしょ?彼女にしてくれるってことでしょ?そんなの、喜ぶしかないよ――なんて淡い期待……っていうか濃すぎる期待を抱いていたのが少し前。
だけど現実とは、なんとも残酷なもので。
「ミミ、今日は帰らないから」
「お仕事ですか?」
「んーん。女」
「……了解です」
彼女になれた!と思っていたのは、私だけだったみたい。
ひどい。悲しい。傷ついた。こんなの嫌だ。嫉妬で狂っちゃう――って思うんだけど。
文句を言ってやるはずの口は、咲人さんを前に緩むことしか出来なくて。デレデレと、だらしなく愛の言葉を囁いている。
「行ってらっしゃいのキス、したいです」
「やだよ。ミミ、下手だもん」
「濃いやつ、します!それで咲人さんを悩殺します!」
「それも下手だからヤダ」
むぅ。咲人さんを触るには、高すぎる壁がそびえ立っている。咲人さんの住むマンションの一室からお見送りをしてるだけなのに、どうしてこうももどかしいんだろう。
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