第27話

でも……一緒に帰るって約束が本気だったならさ。



同じ教室なんだから、ホームルームが終わって、すぐ話しかけてくれたら良かったじゃん。


なのに香月雅は、さっきまで教室にいなかった。ってことは……やっばり約束を忘れていたって事でしょ?



(〝そういえば〟って思い出して、急いで教室に引き返したに決まってる)



って思うけど、



『仁奈は、かわいいから』



さっきの言葉が割と嬉しかった私は……少しだけ、淡い期待を抱いてしまう。


香月雅は「本当に私と帰りたかった」んじゃないかって。



「さっき……なんの用事があったの?」


「え?」


「ホームルームの後、教室にいなかったから」



すると香月雅は、少し視線を泳がせた後。「あ〜」と間の抜けた声を出した。



「ちょっと野暮用」


「ふぅん?」



彼が歩く度、黒の猫毛がふわりと揺れる。柔らかそうな髪だ。


意外にも大きな背中を見ると、昨日は感じなかった逞しさを覚える。


女子が好きそうな条件が揃ってるなぁ。これで顔がいいんだから、そりゃ姫岡さんも手放したくないわけだ。

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