第26話

そう言えば、朝の下駄箱で、そんな話を聞いていたような。


でもココは既に香月雅の独壇場。自分の都合の悪いことは、全てシャットアウトするかのごとく。


私に喋らせないまま、さらりと教室のドアまで移動した。そのまま帰るのかと思いきや。


光の速さで私をさらう自分を、呆然と立ち尽くして見る鈴木くんを一瞥する。



「俺ってわりと平和主義なんだけどさ。それでもお前の口ぶりには嫌気がさすよ」


「は?」


「仁奈は、かわいいから。彼女の魅力に気づかなかった時点で、お前の負けだよ」


「!」


「じゃあ行こうか、仁奈」



開いた口が塞がらないのか、言葉を失った鈴木くんは、最後まで何も言わなかった。あんなに驚いた顔、初めて見た。



(って、そうじゃなくて)



スタスタと。私の手を握り、下駄箱へ向かう香月雅。


私の方は一切見ないくせに、私の歩幅に合わせて歩いてくれる。



そんな姿を見てると……女慣れしてるなぁって。思わず感心してしまった。

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