第25話

「にしても小里も不運だよな。あの香月に目をつけられるなんてさ。軽い男とは聞いてたけど、本当に見境ねぇのな」


「……うん、本当。そうだよね」



ハハハと、乾いた笑いが出る。


なんだろう。鈴木くんと話していると、どんどん自分が崩れてく感覚になる。いや、崩されてるというのか。自信をそがれる。


これ以上、一緒にいたくない。

もう帰りたいな、って。


カバンの取っ手を、力強く握った時だった。



「分かってないなぁ。軽い男が本気で〝好き〟っていう破壊力が、どれだけ凄まじいものか。鈴木、知らないの?」


「な、香月!?いつの間に……!」


「俺の可愛い人が、なかなか来ないから。迎えに来たんだよ」




香月雅は私の机まで来て、私の手ごとカバンを握る。「忘れ物ない?」と確認され、思わず頷いた。



「ちゃんと荷物をまとめてるあたり、かわいいね。一緒に帰ろうって約束、今度は覚えてたんだ」


(いや、すっかり忘れてました……)

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