第6話「大山賊時代」

[エーコク首都バンダット]にて――――

 僕はグルル14歳、ミルク地区の敵を殲滅したので首都に移動して戦う事になった。 僕は意志が弱いから、基本はリーダーの命令を聞いて行動する。


「首都は広い、全員それぞれ分かれるぞ!!」

 

 僕の配属された班のリーダー、"シュローン・ガルド"さんはそう命令する。





「「「了解!!」」」





 ―――そして、今に至る。


「よーし、足折れて動けねぇだろ?

いやぁ...それにしてもおめェは緑髪の癖に弱いなぁ、こんな冒険者ザコども山賊おれたちは住処を追いやられたんだなと思うと......な。」


 斧を持った髭面の巨漢はそう言う。 恐らく彼は山賊の長であり、今の弱った僕を踏みつけている。

 単独行動を許可されてから直ぐの事だった。


「なぁおい、見えるか?この街は火の海だ。

この歳になると、俺の死んでいった仲間が火の揺らめきの中に居るみたいに毎度見えちまうんだ。

 お前は良いよな、お仲間と今から会えんだから」


「ペラペラと...敗北者ムシケラ負け犬ムシケラらしく巣に籠もってろよ。」


苦し紛れまけいぬの遠吠えだな、いいよもう黙って。

聞いてて見苦しいから...あれ?この場合は聞き苦しいかな?」


「....クソが!!」


「じゃ、今度は地獄で虐めてやるから」



 ―――ドッッ!!



 そんな鈍い音が辺り一帯に広がる...が、それは僕の首から発せられた物では無かった。


「大丈夫か!?」


「...ありがとう、君はシュローンさんの言ってたオオダイさんの息子、だっけか?」


「...そうだよ、そんな事より怪我は?」


「...足が折れてる」



「――あぁ痛ってぇな〜、ドロップキックかましやがったなこのクソガキが」



「(ピンピンしてる...全力で魔力を込めた一撃なのにタフ過ぎる。これは俺も覚悟を決めなきゃな)」

「そこで安静にしてて、俺"達"がコイツを倒す!」


「お前、落ちこぼれオオダイのガキか?

まずは大先輩様に名前教えろや、礼儀知らずガキ」


「アガリ・エールマ!今日冒険者になった!!」


「第38代目山賊の長『アガリ・ポトポト』」



――激戦の瞬間とき

 周囲は瓦礫と化した家々と魔力で出来た炎の渦、そんな成れ果てとも言える光景で二人は相対した。

 この場の張り詰めた空気を感じれば、どんな間抜けにも死闘が起こるという事を察せるだろう。


「あ、アガリ!?マジで!?!?」

「あぁっ、エールマのバカ!!早速隙見せた!!」


「驚いてる暇は無ェぞ〜『蜘蛛の十百神アミタンネカムイ』!!」


「――――ッ!?ア、『火の十百神アペカムイ』!!」


 (アイツ...!自分の契約している十百神を出してから魔力が格段に上がった、オーラがデカ過ぎる!!

 奴は立ち止まっているだけだ、それなのに怖いッ!!)


 僕が怖気づくとアペカムイは淡々とした声で言う。



「落ち着いて、大量のオーラはビビらせる為の見せ掛け、本来はあんなに出す必要は無いわ。

 魔力は生命力から具現化へんかんされるパワー、対してオーラは生命力を魔力に具現化へんかんせずにそのまま出力した形。

 その利点としては防御や傷の治癒に使える事。 それと引き換えに生命力をダダ漏らしにしてるわけなのだから当然疲労が早いの。

 エールマ、あなたの一撃は効いてるわ。

今立ち止まって生命力オーラを出し、回復に徹してるのが何よりの証拠、今有利なのはあなたなの」


「(と、でも思ってるんだろうなぁあの十百神アホは、

このオーラは『蜘蛛の十百神アミタンネカムイ』だけの物だ、俺のオーラじゃねぇ。

 それにただ漏らしてるわけじゃない、生命力を俺に譲渡してるんだ。

そして保持している生命力を全て魔力に変換すりゃ...)」


「――エールマ、ここから導き出される最適解は緑髪を連れた逃走よ、まともに戦えば勝ち目は無いわ。 そう...まともに戦えば、ね。

 ここら一帯は魔力で出来た火の海となっている、仮説と想定が正しいならば倒せるかも知れないわ」


「...!オーラと蜘蛛の十百神アミタンネカムイが消えた!!

アッカムイさんを信じる、行くぞ!!」ダッ

「さん付けはやめて!!」グッ


 俺は緑髪君を抱えて逃げ、アッカムイは俺の背中に引っ付く。 後ろから聞こえる大きな足音の重低音は耳を潰される様に重く鈍い。


「えっと、名前は?」


「グルルです...なんでお姫様抱っこ?」


「ごめん、作戦ではこうするのが最適なんだ!」


ダッ

「逃げても無駄だぜ馬鹿が!!

俺はお前如きでも脅威と成る可能性が有るならば、喜んで今有る全てを注ぐ!!!

喰らえ『山賊王である所以ロイヤルビクトリー』!!!!!」



ドガァッッッッッッ!!!!!



 ―――ポトポトの『山賊王である所以ロイヤルビクトリー』は魔力を炎に変換し、広範囲で爆発的な威力を実現する能力。 この能力は本来防御をも貫通する一撃必殺の威力を持つ、が火の十百神アペカムイの前では悪手だった。


「―――炎矢えんや

「....ッな!!?」


 [To Be Continued....]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る