第3話「カムイ」

 ――父と共にバーから出るとそこには。


「貴様が『オオダイ・アガリ』か、光栄に思え。

余は貴様をトノと同等以上に警戒しているのだ」


「あァー?意味分かんねェよ、誰だお前」

「余の名は魔王シューベル、世を統べる為に復活を果たした」


「―――ッ!!」


 こいつが、魔王――――!!!

 身長は父と同じ程2mくらい、長髪は黒く輝き、身長と同じデカさの大剣を持っている。

 未熟な僕では見ているだけで直ぐに呑み込まれてしまいそうな果てしない存在感を放ち、居るだけで半端な肉体では斬れ込みが深く入ってしまいそうな程ににぶするどい恐怖を刻まれてしまいそうだった。


「貴様達冒険者は余の下僕に偵察させていた、

お主の能力は「羊毛のような気体鎧」と「大剣イスヒス」だろう? 『鬼神王者レヌ・テロ』よ」


「それは俺が全盛期の頃に言われてたダセェ異名じゃねェか、少なくとも二十年前から見やがってたのか。

ハハッ!!気持ち悪ィ王だなおい!!!」


 父はわざとらしく魔王を挑発する。


「エールマ、此処から逃げろ。 ここから先は見てる事さえ危険だからな、お前は一人でも多くの人間を助けるんだ」


 父がそう言った瞬間に魔王の周辺から赤い霧が出現し、禍々しい魔物達が現れる。


魔帝伏魔殿まていふくまでん二十二神衆だ、四魔界よんまかいは生憎トノと戦っているのでな。 一つ下の精鋭と戦わせてもらう」


「四魔界は俺に回した方が良かったんじゃねェかッ!?油断してますね魔王さァァァん!!!」


 父は辺り一面を紫色の光で覆い尽くす程の魔力を刺々しく放つ。 魔王も応じる様に魔力を出し、闘いの構図は魔王と父の純粋な力の押し合いとなっていた。


「エールマァ!!はよ離れんけェ!!」

「早く逃げましょうエールマさん!!」


 父の気迫に押される様に、コック店長と其の場を後にする。



「ハハ!前言撤回!!充分だよ、俺の相手としては役不足ではねェ!!!『羊毛の暴挙レヌ・テロ』発動ォ゙!!!

ズオアアアアアアアア!!!!!!!!!」



 父の全力の叫び声に咄嗟に振り返ると、そこにはもう誰も居らず、さっきまで居た所は更地となっていた。父の言う事は本当だった、少しでもあの場に居れば骨も残らなかっただろう。



「先程のオオダイさんの言葉の通り、あなたはこの戦いで多くの人間助けるでしょう。 力を持つ者は皆、力を持たない者を助ける筋合いが出来る。だからそれを果たさなくちゃいけないんです、冒険者関係無く...ね」


「―――心に留めておきます」




 ――――魔王と相対してから5分ほど走っていた。  コックさんは負傷者を探すと言って別れ、僕はこの街を襲撃している魔物達を探していた。

 襲撃者を一体でも減らせば、未来の犠牲者は大幅に減るだろう。と思ったからだ。



「ッ!!」ザザッ


「カ?オヤハヒッコーア!」


 走り続けると異形の化け物と鉢合わせた。

腐った木の実の様な赤くて丸い胴体は浮遊していて、不気味な目と身体から飛び出す臭いのあるガスは不快感を出させる。 話には聞いていた、魔力とはまた違った力を放つ悪い神、コイツが敵性十百神ウェンカムイだ。


「父さんとの修行で殺意ってのはある程度感じ取れるようになってるんだ、お前はダダ漏れだよ。」


「ヌアゲアヒヲガキムチツハウスヌラットソアベテシロレ」 プスプスプスッ


「ハハ、何言ってるか分かんねェ、

なッ!!!!!!」 ドスァ゙ッッッッ


「ウトェ!」プスゥ


 臭いガスを吹き出しながら十百神ヤツはそう叫ぶ、

ちゃんと蹴りは効いてるみたいでよかっ....


「な...!?」

 

 身体が重い、倦怠感だ、熱も出ているのか?

思わず倒れ込んでしまう。

「お前、何をした?」


 恐らく安易にガスを吸ってしまったのが悪かったのだ、気づけば身体に多くの丘疹が出来ている。

「これは...天然痘か――――――!!!?」


 魔力も上手く出せない、そういえばお母さんも天然痘で死んだんだったな。 


「よりによって天然痘これかよ...」


 人を助けると張り切って、狙い通りに敵と会ってすぐにこれかよ...すっげェ......ダサいじゃないか。

 俺はここで、死んじゃうのか?――――


「儚く、そして惜しい、幼子から修行を積み才能も充分にある人間も、この程度で倒れてしまうとは。」


 少女の声...


「―――顔を上げて」


見上げるとそこには炎の薄着に身を包んだ、不思議と暖かく、安心する印象を持つ少女が居た。

「.......可愛い」

「そ、そんな言葉で私が喜ぶと思うなっ!」


「ジャミセレニ!イペキメウ!!

チキガ"ロウボエメリ"スュッスアハサメセモトウドガ、ヲチスハジャミンストヤウウナデヤカヤッチハキ!! カヤウイガレハヤウウキゲアヌスワモセガクガ!」

 

 天然痘の敵性十百神ウェンカムイは大声で捲し立てる。 言葉が分からない僕からしても不愉快で、忌まわしい言葉を言っているのだろうと思わせる。

 すると少女は、


「ダミロ!ケタクヤウアダラカモェ!

ケシッチクハムムトェニキカスユガット!」


 と言い返す。何を言ってるかは分からないが、「ム、ムチモンヤツダセハヒニスダワエガ!!!」と少なくとも天然痘の敵性十百神ウェンカムイは効いた様子だった。


「ねぇ!早く私と契約しよう!!名前は!!?」

「え、えっと」

「急いで早く!!!」

「あの、契約って」

「あくしろよオオオオオ!!!

質問を質問で返すんじゃねェェェェ!!!」

 

 けっこう、やばい子なのかも......


「アガリ・エールマです...」

「私の名前はアペフチ!アペカムイとでも呼んで!」


「「「「契約コントラクト!」」」」


 [To Be Continued....]

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