第2話「昼時」

カランカラン

そんな音を鳴らしながら広いバーに入る


「おぉ、オオダイ様。よくぞお参りで」


「そう固くなんなよコックさん!」


 お父さんの顔は一気に明るくなった。


「紹介するぜエールマ、この人はコック店長。

俺が小せェ時に匿ってくれたんだ、しかも当時は山賊として追われてる身だったんだぞ?」


「よろしくお願いします、コックさん。

(山賊のくだりは無視しよ...)」


「エールマ様ですね、トノ様からつい先程お聞きしました。 冒険者というのは大変なものです、もしかしたら死ぬかも知れない、そんな仕事に覚悟と責任を持って就けれますか?」

「えっと...まだ分からないです」

「あはは、すみません、少し意地悪な事を言いましたね。私も一人の息子を持っているのです、なので他人の息子でも心配性になってしまうのです」

「流石コックさん!!」パチパチ


 父がうるさいのは慣れっこだ。


「あの...ご注文は」

 

 美人で綺麗なウェイターさんが何やら緊張した顔で注文を聞いてきた。


「...おっと、噂をすれば。

彼が私の息子であるナンヒです。」

「えぇ!!?」

「せっかく綺麗に産まれてきたんだし看板娘になってもらおうかと」


 思ったよりヤバい人だった。


「ナンヒも冒険者です、師匠にしても良いんですよ?」

「や、やだなぁお父さん

僕に師匠は務まらないよ、エールマさんの師匠なら僕の恩師でもある『オゴリ・タカシタ』さんを推薦するかな〜」

「エールマの師匠兼お世話係はギュウトウが良いって決めてるから却下いやだ!」

「ギュウトウ...『ギュウトウ・ミツル』様ですか」

「最高段位である八段冒険者の人ですよね、確かオオダイさんのバディ.....でしたっけ。次期六大冒険者は彼だとか」

「無いな、アイツは一回トノを殴った」

「それと何が関係あるんです?」

「六大冒険者は言い換えればトノの弟子六人衆だ、だからどんなに強くてもトノジジイに認められなければ六大冒険者には成れない」

「でもオオダイ様はトノ様に大分失礼ですよね、

それはいいんです?」

「あぁ、トノは俺の言動より山賊の直系が仲間になった事の方が嬉しいらしい」

「変わり者様ですねぇ〜」


 ....僕は一言も喋れなかった、冒険者トークには入りたくても入れなかった。


「エールマ、師匠せんせいと仲間と仕事は選べよ。

この世界の武力の大半を魔力が担っている、

魔力は変幻自在だ、それ故学び方で大きく他者との差が生まれる。」

「...うん」

「だから自分で言うのもなんだが、人類でも屈指の実力を持つ俺のノウハウが詰まったギュウトウに教えてもらった方が俺は嬉しい」

「.......うん」

「だが、だがな!本当は嫌だけど、本当の本当に嫌なんだがな!!師匠はお前が自由に決めていい!!

冒険者は自由であるべきなんだ、それがトノジジイの意思。六大冒険者のガキとしてその意思を受け継いで欲しいのが一番なんだ」


 .......


「この世界は自由で広い、お前の人生も同じなんだ。だが、だがらぁ゙、だがらなぁ゙!」

「う、うわぁあ!オオダイ様!!泣いてます!!涙出てますよ!!!ハ、ハンカチ!」

「だっで...!エールマにはギュウトウ以外に習って欲しく無くてェ゙!でもそれを強制するのはもっと嫌でェ゙!」


 父さん...今まで無愛想だと思ってたけどこんなにも僕を思っててくれたんだ.....


「ありがとう、父さ」ダンッ

「大変だコックさんッ!!!

奴らが直ぐ其処まで来ているッ」

「魔王軍襲来、強襲だッッ!!!!!!」


勢い良くバーに駆け込んだ男が伝えた情報は、

その場の全員を驚愕させた。


ガタッ!!!

「なんだと...魔王軍!?いやそれより..!!」

ドッ!ドッ!ドッ!

「そんな...!!だってここは...」

ドドドドドドドドドドドド!!

「エーコクの中心部だぞ....!?防衛軍が、もう破られたというのか――――!?」


[To Be Continued....]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る