第15話
あたしはその後も引っ張られながら歩き続けた。
アルさんはあたしが息を切らせ始めた事に気づくとさすがに歩くスピードを緩めてくれた。
「…アルさん。歩くの速すぎです」
「すまない。ちょっと、急いでいたんでな」
そう言ってまた、歩き始めた。アルさんに連れられながらあたしはどこまで行くのかと思う。
「あの。アルさん、どなたの元へ行くんですか?」
あたしが問うとアルさんは少し考える素振りを見せた。
「そうだな。お前には説明をしておいた方がいいか。これから、国王陛下と王妃陛下に謁見しに行く。そのためにミヅキを迎えに来た」
「ええっ。王様と王妃様に会うんですか。あたしなんかが行って大丈夫なんですか?!」
素っ頓狂な声を出すとアルさんは落ち着けと言った。
「昨日の内にミヅキが月玉の巫女だという事は陛下方には報告してある。俺の対(つい)に当たることもな。異世界から巫女が召喚されるのは昔からの慣わしになっているから。そう驚く事でもなくなってきている」
説明を聞いてあたしは月玉の巫女とか対という言葉に首を傾げる。
「アルさん、よくあたしの事を対と言いますけど。どういう意味なんですか?」
「…お前、鈍いな。対というのは性質は正反対だが同じものの事を言う。同時に存在していてどちらが欠けてしまっても駄目なんだ。要は光と闇とかがそれに当たるな」
「光と闇ですか。アルさんはあたしを月の巫女と言ってましたね。対という事はアルさんも何かの巫女なんですか?」
「そうだ。俺の場合は太陽の剣の持ち主で光の神子と呼ばれている。光の神子と月玉の巫女は似た時期に選ばれる。そして、どちらかが欠けると力と共に命を失う。だから、光の神子は男が選ばれる事が多い。反対に月玉の巫女は女が多い。どういうわけかな」
アルさんは複雑そうな表情を浮かべた。
あたしはへえと言いながらアルさんの手を引っ張る。
「とりあえずは行きましょう。王様たちに挨拶をしなくちゃいけないんでしょう?」
「そうだな。では行くとするか」
アルさんは気がついたらしくまた歩き始めた。
あたしは引っ張られながらも王様たちがいるという謁見の間に急いだ。
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