第14話

 あたしがナタリアさんに言われて自室に戻るとソファに早速、座った。


 シェルさんがお茶を入れますねといって準備をしてくれる。

 ナイトドレスから昼間に着る用のワンピースをエミリーさんとナタリアさんが選んで持ってきてくれた。

「ミヅキ様。今日は黄色のワンピースにしましょう。後、アルブレヒト殿下がお迎えに来られるので。お化粧と髪結いをしておきましょう」

 エミリーさんがにこやかに笑いながら言った。ナタリアさんも腕捲りをしている。

 あたしはその後、コルセットの締めすぎでふらふら状態になったのだった。




「…ミヅキ様。大丈夫ですか?」

 シェルさんが気遣わしげに聞いてくる。あたしはふらふらになりながらも何とか我慢した。

「大丈夫。心配させてごめん」

「やはり、コルセットを締める時はもう少し緩めにしますね」

「…そうして。お願い」

 そう言うとシェルさんやエミリーさん、ナタリアさんも心配そうにしながらも頷いてくれた。

 その後、アルさんこと第二王子であるらしいアルブレヒト殿下が来られた。

「ほう。馬子にも衣装だな。よく似合っている」

「…ありがとうございます」

 あたしは馬子にも衣装と聞いて頬をひくりとさせながらもお礼を言った。

 まあ、昨日はパジャマに健康サンダル(派手なピンク)だったからな。

 そう思っているとアルさんはあたしにすっと手を差し伸べた。今日のアルさんは黒の襟の詰まった騎士さんが着そうな軍服と白のトラウザーズといった格好をしている。

 けっこう、白に近い銀髪と紅い色の瞳には映えていて似合っていた。

 見とれながらもあたしは差し出された手に右手を重ねた。

 アルさんは思いの外、強い力でぎゅっと握った。温かい手は剣ダコがあってざらりとしている。

 大きくて骨ぼったい手は意外と安心できる何かがあった。

「では行くとするか」

「わかりました。で、どうしてあたしの部屋にいらしたんですか?」

「…何も説明をしていなかったな。そなたには会ってもらいたい人がいる。その人の元へ行くんだ、今から」

 はあと言うとアルさんはすたすたとあたしの手を握ったままで歩き始めた。

 あたしは引っ張られて同じように歩くしかなくなる。

 アルさんの美貌は朝の光の中で見ると神々しくすらあった。キラキラと輝く白銀の髪は天使の輪が二重にできていて白い肌と相まって美しい。

 紅い瞳も透明感のあるルビーみたいで女性のようにすら見える。だが、エラが少し張った顎の線で男性であるといえた。

 あたしは見とれながらも足だけは動かすのであった。

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