第9話

 目の前の美女はあたしの頭を撫でてきた。

 にこにこと笑っているが。誰なのかわからない。カティスさんとか言ってたけど。

『いらっしゃい、美月ちゃん。わたしは改めて言うけど。名をカテイス。このカルーシェ国の守護神の内の一柱。闇を司っているの』

 いろんな難しい言葉を言われてあたしは混乱状態になる。

 守護神はかろうじてわかるけど。一柱って何だ?

『…あの。神様なのはわかりましたけど。一柱というのは何ですか?』

 首を捻りながら尋ねた。カテイス様は困ったように笑った。

『…まあ、いきなり呼び出されたら混乱もするわよね。一柱というのはね。神の数を現す言葉よ。人の人数と似たようなものだわ』

 成る程と納得できてあたしは頷いた。神様の数を現す言葉だったのか。

『とりあえず、まずはあなたが何故、こちらの世界に呼び出されたのか説明をするわね。美月ちゃんはわたしたち、守護神が日本の神に掛けあって呼ばれた存在なの。この国では何百年かに一度、危機が訪れていた。その際の国を救うために選ばれていたのが月玉の巫女と光の神子。美月ちゃんはその内の月玉の巫女ね』

 ゲツギョクノミコって。いかにも、ロングプレイングゲームに出てきそうな名前だ。

『…あたしが国を救うって。ちなみに光の神子もこの世界のどこかにいるんですか?』

『いるわよ。あなた、もう会ってるのに。気づかなかったの?』

 きょとんとした顔をカテイス様はする。もう、会ってるとは。

『もしかして、光の神子って男性なんでしょうか。それとも、女性かな?』

『…えっと。男性よ。そうね、はっきり言うとこの国の第二王子が光の神子なの。アルブレヒトがそうよ』

 あたしはその言葉を聞いて硬直した。あの、ど美人のアルさんが光の神子!?

『ええっ。アルさんが光の神子なんですか?!』

『だから、さっき言ったでしょ。このカルーシェ国ではね。光の神子は大体、王族がなる事が多いの。今から、二百年ほど前に選ばれた光の神子も王子の内の一人だったわ』

 あたしはあまりの話に唖然とするしかない。カテイス様の記憶力は半端ないと思った。

『美月ちゃん。二百年前にもいた月玉の巫女はあなたと同じ世界の日本から来た人よ。名を春奈と言ったの。彼女の子孫が今のカルディ公爵家の人々になるわ。まあ、対の光の神子との間に生まれた子たちの子孫とも言えるわね』

 あたしは更に驚いた。月玉の巫女さんが光の神子と結婚してたとは。しかも、子孫までいるだなんて。

 カテイス様はあたしの頭を撫でながら微笑んだ。

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