第8話

 左側のシェルミナさんはお色気たっぷりの笑みを浮かべて少し、甘い感じの声でこう言った。

「…初めまして、月の姫様。わたしは名をシェルミナと申します。普段はシェルとお呼びください」

「は、初めまして。あたしはミヅキ・スギノといいます。こちらこそ、お世話になります。シェルミナさん」

 お辞儀をして顔を上げると右側のナタリアさんも自己紹介をしてきた。

「月の姫様。あたしはナタリアと申します。シェルさんやエミリーさんと同じく、お仕えするようにと第二王子殿下より仰せつかっております」

 金髪に青い瞳のナタリアさんはにこりと笑いながら言ってきた。シェルさんとエミリーさんもあたしに微笑みかけてくる。

「…ミヅキ様でしたね。とりあえず、こちらのナイトドレスにお着替えください。今のご衣装でもよいのですけど。もし、お部屋の中で過ごされるとなると目立つと思いますので」

 エミリーさんはそう言いながら、あたしにナイトドレスを掲げてみせた。わかったと頷くと三人とも、嬉しそうにしたのであった。




 その後、ナイトドレスに着替えた。シルクでできているのかはわからないけど。すごく、手触りが良くて着心地も最高に良かった。機嫌良く、礼を言えば。エミリーさん達はこれくらいは当然ですと返してきた。

 そして、寝室に案内されてあたしは大人五人くらいは優に寝られるくらいの広さのベッドを見て興奮してしまった。

 エミリーさんはクスクスと笑いながらもでは、ゆっくりとお休みくださいと言って部屋を出て行った。

 あたしはふかふかで柔らかなベッドに入り、こちらもふかふかなクッションに体を沈ませながらふうとため息をつく。

 今日は色々あり過ぎて今更ながらに疲れがどっと出てくる。

(…それにしても、異世界に来るだなんて思いもしなかったな。帰れるのかな?)

 そんな事を思いながら、まぶたを閉じた。眠気が来てあっという間に寝てしまっていたのであった。



『美月ちゃん。目を覚まして』

 凛とした女の人の声が脳内に響く。あたしは何事かとまぶたを開けた。

 目の前には綺麗な黒髪に透明感のある琥珀色の瞳の美女が佇んでいた。

 黒髪は緩やかにウエーブしており、柔らかそうである。

『…あれ?あたし、寝ていたはずじゃ…』

『…こんばんは。美月ちゃん。お休みの途中で悪いわね。ちょっと、話したい事があったから呼んだのだけど』

 目の前の美女は優しく微笑んでいる。あたしはあまりの状況に唖然とした。

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