第7話
「……あの。どうしたんですか。あたし、何か変な事を言いましたか?」
仕方なく、問いかけてみたが。アルさんはなかなか、答えてくれない。
先ほどまでいろいろと話していたのに。変なのと思っていたら、アルさんが顔を赤らめながらこう言った。
「…その。そなた、厠を知らないのか。まあ、簡単に言うと用を足す場所だ。お手洗いと言ったらわかりやすいかな」
「……えっ。カワヤってお手洗いの事を言うの?!」
驚きながら言うとアルさんは呆れたような目線をこちらに送ってくる。
「そなたのいた国では厠とは言わないのか。せめて、それくらいは知っておかないと。私だったから良かったものの。他の者に聞かれたら面倒な事になるぞ」
「…はい。そっか、厠はトイレの事だったんだ。アルさん、教えてくれてありがとう」
「あ、ああ。今度からわからない事があったら侍女に聞け。時間があれば、私も教える。まずはここの言葉と礼儀作法は覚えてもらわないとな」
ええと言ったらアルさんは否が応でもやってもらうと念押ししてきた。
渋々、頷くともう遅いから寝ろと言ってアルさんは部屋を出ていった。
そして、少し経ってから赤茶色の髪と薄い琥珀色の瞳のすらりと背の高いモデルさんみたいな美人の女性が入ってきた。年齢は二十代前半くらいだろうか。
右側に金髪に青い瞳の可愛らしいお人形みたいな少女もいる。年齢は赤茶色の髪の人よりもいくらか若いようで十代後半くらいと思われる。
左側に濃い藍色の髪と薄い紺色の瞳のミステリアスな雰囲気で色っぽい美女もいた。この人は二十代半ばくらいかな。
そう思いながら、観察していると真ん中のモデル風の女性が鈴の鳴るような声で話しかけてきた。
「…あの。姫様。遠い異国から来られてお疲れでございましょう。わたくし達は姫様のお世話をするように申し使っております。何なりとお命じくださいませ」
「…はあ。ご丁寧にありがとうございます。でも、姫様というのはどなたの事ですか?」
「それはあなた様の事でございます。ミヅキ様」
はい、わけわかめな発言が出た。
何ですと?あたしが姫様だって。どういう事よ。
頭が一気に混乱を始める。その間にもモデル風の女性はにこりと笑ってあたしにグレーのワンピースらしきものを見せてきた。
「…ミヅキ様。わたくしは名をエミリーと申します。右側がナタリア、左はシェルミナといいます」
三人とも紺色の足首までのワンピースに白いフリルのついたエプロンを身に付けている。
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