第10話

『美月ちゃん。話を戻すわね。これから、この国は滅びの危機を迎えるわ。月玉の巫女として結界の修復と妖魔退治をお願いしたいの。アルブレヒトは今まで妖魔や魔物と戦ってきているから、かなり強いわよ。あなたのことを守ってくれるから。安心して』

『はあ。やらなければならない事はわかりましたけど。要はアルさんと協力して役目を果たせば良いんですね?』

『その通りよ。アルブレヒトに自分が対の月の巫女だと言えば、聞いてくれるはずだわ。後、私の名前を出せば、信じてもらえると思うけど』

 カテイス様はそう言うとあたしから一歩離れた。

『それと。対の光の神子の他に闇の巫女もいるから。彼女の協力も得ておいてね。そうすれば、後々助かるはずだから』

 そう言いながら、カテイス様はバイバイをするように手を振った。彼女の姿が陽炎のように揺らぎ始めた。

『…もうそろそろ時間切れね。美月ちゃん、さっき言った事は忘れないでね。ちゃんと伝えれば、カルーシェ王国の人は聞いてくれるから。また、次の機会に会うのを楽しみにしているわ。さようなら』

 真っ白な霧に目の前が覆われて何も見えなくなる。あたしの意識も薄まっていった。




 あたしはゆっくりと意識が浮上するのを感じ取った。そうだ、何か変な夢を見ていた。ぼうっとなる頭で月玉の巫女だとか光の神子などの言葉を思い出した。

 琥珀のような綺麗な目と黒髪のど美女が出てきて、カルーシェ国だったか。その国を救ってほしいとも言われたのだった。

 後、白銀の髪に紅い瞳のとても綺麗な美女も出てきたかな。不思議な事だらけで自分は完璧、夢を見ているのだろうなと思う。

 でなけりゃ、説明しきれない。けど、夢は醒めてはくれないようだ。目を開けて、窓のカーテンから漏れる光で部屋の中が薄っすらと見えたのでキョロキョロと視線を巡らせてみる。自分の部屋ではないのは一目瞭然だった。

 重厚な感じの深紅のカーテンに壁紙も温かみのある赤茶色の花柄のものだ。置いてある家具も木目が美しい白木で作られたもので高価なのは見るだけでもわかった。

 部屋の中心に置いてあるベットもクッションなどがふかふかでシーツもさらりと清潔で触り心地がいい。

 昨日は夜中で暗かったし、気持ち的に余裕がない時だったから部屋の中を確認するどころじゃなかった。

 けど、あたし、役目を終えたら元の世界に戻れるのだろうか。あの家に家族や友人達と再び、会えるのだろうか。

 それが脳裏を支配し始めてあたしは途方に暮れた。

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