第3話

「…そなた、もしや。異界から来たのか?」

「…え。イセカイって。あたし、怪しい者ではないですよ」

 そう答えるが男性は納得していないようであたしの頭から足の先まで、じっと観察してくる。よくは見えないが気配でわかった。

「……見たところ、怪しくはあるが。まあ、いいだろう。そなた、名はなんと言うのだ。私はアルブレヒトという」

 一応、男性の方から、名乗ってきたのであたしも答えた。

「あたしの名前は。美月、杉野美月と言います」

「ミヅキ、か。スギノというのはミドルネームというところかな?」

「…そ、そうです。ええと、あなたはアル、アルブレヒトさんでしたっけ?」

 そうだと答える彼だったが。少し考える素振りをして、あたしにこう言ってきた。

「…私の名は長ったらしいだろう。生まれた家が訳ありでな。そのせいでこんな呼びにくい名になった。私の事はアルと呼べばいい。そなたの事はミヅキと呼ばせてもらう」

「わかりました。じゃあ、アルさんと呼ばせてもらいます」

 それでいいと彼は言うのであたしは少し、ほっとした。

 そして、アルさんにお礼を言って歩き出そうとした。

 だが、腕を掴まれて留められた。

「…待て。ミヅキ、そなた一人だけでどこへ行く気だ。こんな夜中にしかも、人里離れた森の中だぞ。危険だ」

「えっ。家に帰ろうと思って。アルさん、離してくださいよ」

 そう言って腕を振りほどこうとした。けど、アルさんは余計に掴む力を強めてあたしを引きずりながら、歩き出したのだ。

「ちょっと、待ってくださいよ!どこへ連れて行く気ですかー!!」

 大声で叫んでも離してはもらえず、あたしは無理矢理、どこか遠くに連行されてしまった。




 そして、しばらく歩いて行くとアルさんは唐突に腕を離して立ち止まった。あたしの方に振り向くとこう言った。

「ミヅキ。ここまで来れば、ひとまずは安全だ。アルシンの村まであと少しだからな。それと今は季節が初秋だから、夜中は冷え込む。室内にいるか外套を着ていないと体調を崩す素だ」

 低い声で言われてひとまず、頷いておいた。さあと風が吹いて雲が流されていたらしい。切れ間から月の光が差し込む。

 その光で辺りの風景が薄っすらと見えた。ポツポツと立っている木々や向こうの方には民家らしきものが見える。

 一番驚いたのはアルさんがめちゃくちゃ、美形だったということ。月の光に照らされる綺麗なプラチナブロンドの髪、透明感のある紅の瞳は一瞬、息を飲む美しさだった。

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