第55話

ゆっくりと、ドアノブをまわして、ドアを開ける。



淀んだ、かび臭い匂いが、鼻をつく。



でも、窓を開ければ大丈夫そうだ。



安い家賃の割には、フローリングと畳の2部屋。



台所も、割りと大きいし。



思いながら、フローリングのほうの窓を開ける。



雨の香りが、ふわり、と、飛び込んできて、この部屋を満たしてくれる。



と、スーツケースを運んできてくれた、伊織くんが、畳の部屋の窓を開けてくれた。



「…あ、ありがとう」



お礼を言ったら、



いやいや、これくらい。



ちいさく、首を横に振った。




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