第43話
雨が降る前に、不動産屋さんから預かっていた部屋のカギと地図。
その地図は今、彼の手元にある。
「…あー、うちの近くだ」
こっちー。
前方を指差しながら、道案内をしてくれる。
相変わらず、揃う歩幅。
正直、助かった、と、思う。
方向音痴だし、何よりも、心細かったから。
私のスーツケースを引いてくれる横顔をそっと、眺めた。
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