第39話

「早くー。風邪引くっすよー?」



いつまでも歩き出さない私を感じとった彼が、くるり、と、振り返った。



その口調は、相変わらずぶっきらぼうだけれど。



もしかしたら、他人に気を遣わせないためなのかも知れない、な。



なんて、無意識に考える。



会ったばかりの、相手に。



他人に深入りするのは、危険だ。



今までの経験がそう、本能的に告げている、のに。



気がつくと、一歩、一歩、と。



足を前に進めている。


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