第38話

気がついたときには、もう。



ぼたぼたと、頬を伝う涙が顎も伝って、舗道に落ちる。



雨と混じって、ちょうどいいか。



私の涙など、雨に紛れるくらいで、ちょうどいい。



「すげー。むくれたり、恥ずかしがったり、泣いたり。忙しーす、ね」



「…うるさい…、」



「さーせん」



あっと言うまに、私に追い付いた彼が、黙って私の手からスーツケースを取り上げてしまう。



この辺、歩きづらいから。送ります。



有無を言わさず、歩き出す背中を、見つめる。




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