第21話
彼にいざなわれて、先ほどのカフェの前まで来たけれど。
「…あの、私、こんなんだから、お店汚しちゃうかと…」
ドアを開けてくれた指さきを、見つめる。
細く、長い指さきはきっと。
汚いものには、触れたことがないんだろうな。
無意識に、考えている。
「いやいや、オレも濡れたんで。お互いさまって、ゆーか」
あったかいコーヒー、淹れるんで。
オレ、コーヒー淹れるの、得意なんす。
気がつくと、背中を押されている。
私なんかに触れたら、汚れてしまうんじゃないだろうか。
目の中に焼き付いている細い指さきを、頭の中で再生する。
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